最大で23台もの自動化重機を動かす前代未聞の現場、成瀬ダム堤体打設工事を統括する鹿島・前田建設工業・竹中土木JVの奈須野恭伸所長。「旧来の方法が一番良いという考えを捨てよ」という鹿島の伝統を体現し、新技術の導入や自動化重機の効率化に向けた工夫に日々取り組む。(聞き手:夏目 貴之、橋本 剛志=日経クロステック/日経コンストラクション)
成瀬ダムでは、自動化施工の様子を見学できます(現在は新型コロナウイルス感染症の影響で制限中)。自動で動く重機を見て、ぶつかりそうだと思う人がいるのではないでしょうか。
確かに、そういった指摘を受けることはあります。でも実際は逆です。狭い堤体上をブルドーザーが並んで動いていれば、オペレーターが運転する方が事故のリスクは高い。自動化すれば、センサーで検知して止まるわけですから。
「オペレーターが操縦する方が品質は良いだろう」という意見を聞くこともあります。しかし、押し方は人によって違う。必ずしもオペレーターの腕が勝るとは限りません。
実際にブルドーザーを操縦してみれば、CSG材のまき出しがいかに難しいか分かるはずです。ただ押すだけでは、大玉(大きなれき材)が偏ってしまう。まき出しの様子を見れば、オペレーターが変わったかどうかが分かります。
一方、クワッドアクセルは誰が見てもCSG材を厚さ25cmずつ、3層に分けてきっちり施工している。押し方は一定で、高い品質を保ちやすい。
クワッドアクセルの全面的な導入に当たって、不安はなかったのでしょうか。
もともと大分県内に建設した大分川ダム(注:2019年に本体が完成。その後「ななせダム」と命名)の現場で、自動化した振動ローラーの導入を経験していました。当時から、どんどん発展していく技術だという確信があった。その時は振動ローラーの施工範囲の四隅にGPSのアンテナを設置していました。今はそれらが不要になるなど、実際に進化しています。
ダンプトラックの自動化をやってみようと判断したのも、大分川ダムの現場にいた時です。現場の一部を使って自動運転の練習をさせました。当初は蛇行してしまい大丈夫かと心配しましたが、その後に福岡県内で施工した小石原川ダムの現場で形になったのです。
そうした積み重ねがあったので、成瀬ダムでクワッドアクセルを導入する際も、やれないことはないと思っていました。