重機メーカーのコマツは重機の自動運転だけでなく、建設会社が取り組む施工計画の分析にも乗り出す。2021年には異業種と組み、建設業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する新会社も立ち上げた。コマツで事業をけん引する四家千佳史執行役員スマートコンストラクション推進本部長に現状の課題や取り組みを聞いた。(聞き手:橋本 剛志)
コマツはICT建機を開発したり既存の重機にセンサー類を取り付けてマシンガイダンス(MG)の機能を持たせたりするなど、建設工事の省人化に積極的です。一方で、重機が施工全体の自動化や無人化に及ぼす影響は限定的だとの指摘もあります。
建設工事の中で重機を使う作業は限られており、測量や施工計画、品質確認など重機を扱う会社が関わらない領域がたくさんあります。「機械屋に何が分かるのか」という意見があるとすれば、それはごもっともでしょう。
ですが、だからこそ我々は2015年から、建設工事の受注段階から施工の後まで顧客の建設会社に寄り添い、課題を解決する「スマートコンストラクション」という取り組みを続けてきました。
具体的にどのようなことをするのでしょうか。
建設工事のプロセス全体を分析して課題を発掘し、解決策を顧客と一緒に探ります。掘削すべき土量を精度よく見積もるためにドローンによる3次元測量を提案したり、施工計画をクラウド上の3次元モデルで検証したりすることができます。
顧客が工事に着手する前から相談に乗る「スマートコンストラクションコンサルタント」という役職を設け、全国で約500人育成しています。建設会社にいた人材も60人ほど在籍しており、土木施工管理技士なども所属しています。
21年3月末時点で1万3000以上の現場を手掛け、工事自体に対する知見はかなり蓄積されたのではないかと思います。コマツでは月に1回、ステアリングコミッティーという社長も交えた役員会議が開かれるのですが、現場の事例について切り土や盛り土の手順の意見が出るほどです。