深刻な人手不足などを背景に、自動化重機を含めた「建設ロボット」の開発・導入が活況だ。ただし、開発に当たってはその費用の捻出や安全対策といった課題も多い。ICT施工の推進などに長らく取り組んできた立命館大学・建山和由教授に、建設ロボットとの上手な付き合い方を聞いた。(聞き手:夏目 貴之)
建設業では、製造業に比べて自動化やロボット化が進んでいません。
建設業は、製造業に比べてロボット化が20~30年遅れているといわれています。建設工事が扱う土砂などの自然物は、形状や物性が現場によって異なる。屋外の環境は一定ではないうえ、ロボットが自ら現場内を移動しなければなりません。工場のようなライン作業は困難です。
技術開発に予算を投じにくい点も建設業の特徴だと言えます。開発した技術を販売するわけではないので、実工事のなかで、その予算を使って開発に取り組まざるを得ません。
研究開発費を総売上高で割った数値を業種別に見ると、建設業は0.4%しかない。製造業の4.1%に比べて低い水準です(注:数値は2014年度。総務省の科学技術研究調査に基づく)。
予算が限られるため、高度な技術に挑戦するよりも実用性や費用対効果を重視する傾向にあります。下水管の調査などインフラの維持管理に使うロボットや、災害復旧で遠隔操縦する重機が開発の中心でした。
近年、自律運転の重機やロボットなど、いわゆる「建設ロボット」に注目が集まるようになりました。
人手不足に伴って、建設ロボットの必要性が再認識されてきました。2000年代に測位衛星技術が普及し、10年代の後半から人工知能(AI)の導入が進んだのも大きい。扱う対象や環境、条件に応じて機械が自律的に判断して作業できるようになりました。一般工事で建設ロボットを使う日も来るのではないでしょうか。
建設業界では、1980年代にもロボット開発が盛んでした。70年代から80年代にかけて、メカトロニクスや油圧制御の技術が高度化したのが一因です。加えて経済成長に伴う工事量の増加で、人手不足が深刻だった。当時は、日当3万円でも人が集まらなかったといいます。
しかし、バブルの崩壊とともに失速。先に挙げたような災害対応の技術などに限って開発を継続してきました。
建設ロボットを当たり前のように使うために、業界として今後どういった対応が必要でしょうか。
建設ロボットを導入する障壁として、開発コストの捻出と安全面の法規制の2つが考えられます。ロボットの開発には多額のコストを要します。業界内で共有できる基盤技術については、共同で開発するのも手でしょう。ロボットを導入した分だけ人件費を減らし、工事全体でコストを減らす工夫も欠かせません。
安全に関しては、ロボットが万が一暴走して事故を起こした場合などを想定する必要があります。ガイドラインの策定が望まれます。