全1411文字

自動化重機の普及のネックになり得る問題の1つが、安全対策だ。万が一、自動運転中に作業者と接触事故を起こした場合、誰が責任を取るのか。建設会社だけでなく発注者も気になるこの問題について、ロボットに関する法制度に詳しい小林正啓弁護士に解説してもらった。(聞き手:夏目 貴之)

建設現場で自動運転の重機と接触して作業者が死傷すると、その責任は誰が負うと考えられるのでしょうか。

花水木法律事務所の小林正啓弁護士。2018年大阪弁護士会副会長。経済産業省次世代ロボット安全性確保ガイドライン検討委員会委員や自動配送ロボットのルールの在り方検討WG有識者委員などを務める(写真:小林正啓)
花水木法律事務所の小林正啓弁護士。2018年大阪弁護士会副会長。経済産業省次世代ロボット安全性確保ガイドライン検討委員会委員や自動配送ロボットのルールの在り方検討WG有識者委員などを務める(写真:小林正啓)
[画像のクリックで拡大表示]

 責任の所在と被害者の救済という2つの視点に分けて考える必要があります。まず刑事責任が問われるのは、現場管理がずさんだった場合などです。例えば、自動運転のダンプトラックに指示を出す際に周囲の安全確認を怠り、急に発進させて近くを歩いていた作業者と接触する事故を起こしたとします。

 ダンプトラックに作業者を検知して自動で停止するシステムを搭載していても、操作者の安全確認義務がなくなるわけではありません。それを機械任せにしていたのであれば、指示を出した操作者が業務上過失致死傷罪などに問われる可能性があるでしょう。明らかに操作を誤った場合なども同様です。

 次に被害者救済に関しては、建設現場の事故なので労働災害として処理するのが基本となります。労災保険で補償するわけです。そこで補償が支払われなかったり金額が足りなかったりすれば、被害者が安全管理義務違反を理由として雇い主を訴える他、製造物責任法(PL法)に基づいて重機メーカーなどに損害賠償を請求するケースが考えられます。

 民事訴訟となった場合、安全管理上の問題や、重機の設計、製造、操作マニュアルの欠陥などの有無が争点となります。安全管理上の責任は、工事の責任者などが問われます。後者の重機に関する部分は、例えば重機メーカー、重機の制御盤の製造者、制御システムの開発者が対象です。責任の割合に応じて、それぞれが対応することになるでしょう。

制御システムを改造して自動化していた場合など、自動化技術の開発者の責任が問われるケースも考えられるのでしょうか。

 運用上の問題がないとすれば、訴訟では完成品のメーカーが被告となるケースが多く見られます。外注で製造した制御盤に問題があったとしても、それを組み込んだメーカーは責任を免れないからです。メーカーが被害者に賠償したうえで、その金額を制御盤の製造者に請求する「求償」の形で対応することになるでしょう。