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 ドイツBMWは、リサイクル材と再生可能な材料で100%構成したコンセプト車を発表した。2040年ごろの小型で高級な自家用車を想定したもの。自動車開発の競争軸は今後、二酸化炭素(CO2)に加えて「資源循環」が重要になると見込む。

i Vision Circularの外観(出所:BMW)
i Vision Circularの外観(出所:BMW)
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 「リサイクル材第一主義(Secondary first)」――。BMWは21年9月6日、「ミュンヘンモーターショー2021(IAA Mobility 2021)」の報道関係者向け説明会で、リサイクル材から構成した車両「i Vision Circular」を発表した。車両自体も100%リサイクルできる構成にしたとし、今後は新品材よりもリサイクル材の採用を優先する考えを打ち出した。

 i Vision Circularは全長が4m程度と短い電気自動車(EV)で、ほぼ全てリサイクル材で構成した全固体電池を搭載する。ボディーにはアルミニウム合金のリサイクル材などを主に活用した。リサイクルしやすいようにボディーの部品点数や素材群、表面仕上げなどを減らしている。外装は塗装していないという。部品接合については接着剤の利用を避けた。複合素材も使っていない。

 自動車開発におけるリサイクル材の使用率を現状の約30%から今後は50%に徐々に高める方針を明かした。25年以降に投入する新型車では、鉄鋼やプラスチック、アルミニウムなどのリサイクル材の採用を大幅に増やす考えだ。

 欧州連合(EU)は「グリーンニューディール」と呼ぶ環境政策で、循環経済(サーキュラーエコノミー)を重視する方針を掲げている。20年末、EVの中核であるリチウムイオン電池にリサイクル材の利用を強制する規制案を発表した。今後、電池以外の自動車部品にもリサイクル材の採用を広げる施策を打つ可能性がある。BMWのコンセプト車は、EUの循環経済構想をいち早く採り入れた車両となる。

i Vision Circularの内装。バイオ素材を多く活用した(出所:BMW)
i Vision Circularの内装。バイオ素材を多く活用した(出所:BMW)
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 BMWは、車載電池について「今後新品材の使用は難しくなっていく」と見通す。電動車の増加に伴い、電池に必要な材料であるコバルトやニッケル、アルミニウムなどの需要が高まっているからだ。

 加えて、コバルトの生産は政情が不安定なコンゴ民主共和国に偏る上に、鉱山の権益の多くを中国企業が抑えているとされる。BMWは電池材料については90%以上をリサイクル材で対応できることを技術的に実証しているとする。