ドイツZFは2021年9月6日(現地時間)、電動駆動系の開発期間を最大50%短縮できる技術「モジュラーeDriveキット」を「ミュンヘンモーターショー2021(IAA MOBILITY 2021、一般公開日:21年9月7~12日)」で世界初公開した。自動車メーカーに加え、新規参入の自動車関連企業やテクノロジー企業にも売り込む。
同キットはモーターやインバーター、冷却システム、ソフトウエアなど、電動駆動系の開発に必要なさまざまな技術をまとめたもの。最高出力75〜400kW、最大トルク350〜540N・mの範囲で電動駆動系を構成できる。「コンパクトカーからプレミアムセグメントまで幅広い車種に利用できる」と同社CEO(最高経営責任者)のWolf-Henning Scheider(ウォルフ=ヘニング・シャイダー)氏は説明する。
例えば、コンパクトカー向けには最高出力100kWのモーターと400V対応のインバーターを組み合わせることが可能。プレミアムセグメント向けには、最高出力200kWのモーターとシリコンカーバイド(SiC)をベースにした800V対応のインバーターを提供できる。
最高出力100kW未満の「低」駆動ソリューションと、最高出力200kWの「中」駆動ソリューションはまもなく量産を開始する。これらは同期モーター(PSM)または非同期モーター(ASM)と、400V対応のインバーターを組み合わせる。また、PSMとSiCベースの800V対応インバーターを使った最高出力200kW以上の「高」ソリューションを22年後半に量産する。
同キットは冷却および潤滑システムの高効率化と変速機の最適化によって、機械的な損失を最大70%削減できるとする。また、パワーエレクトロニクスには特許取得済みの同社の技術が含まれるという。
最新の車載コンピューターを欧州初公開
同社は車載コンピューター「ZF ProAI」の最新世代品を欧州初公開した。中央処理型のセントラルコンピューターのほか、ドメインECU(電子制御ユニット)やゾーンECUの用途を狙う。性能面ではレベル2~5の自動運転車に対応できる。すでに乗用車と商用車の両方で主要な受注を獲得しており、24年から量産する。
前世代品に比べて演算能力を66%高め、消費電力を最大70%削減した。AI(人工知能)のディープラーニング(深層学習)に最適化しており、演算性能は20~1000TOPS(毎秒20~1000兆回)。電力効率は3TOPS/Wとする。寸法は24×14×5cm。最新のサイバーセキュリティー機能を搭載するほか、顧客の要望に応じて、異なるメーカーのSoC(System on Chip)を搭載できるという。