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 物価高が生活を直撃しています。円安も先が見通せません。一生懸命働いても生活が苦しくなってきたなあ、日本でこのまま働いていて大丈夫だろうかと考え始めている技術者もいるでしょう。

 ただ、だからといって海外に出れば何とかなるというのは甘い考えです。筆者は東南アジアにもオフィスを構えているのですが、現地の人たちや現地で働く日本人と接する中で、以前とは状況が変わっていることを実感します。

 今回は、ある架空の日本人エンジニアの勘違いを一人語りの形式で書いてみたいと思います。日本と東南アジアでビジネスをしている筆者の実感に基づく創作です。


 会社員として働いて20年以上。賃金はなかなか上がりません。それでも、スーパーの半額セールで食材を買い、衣服は見切り品コーナーで手に入れれば、日々の暮らしに困るようなことはないだろうと最近まで思っていました。

 しかしここまで物価が高くなり、円安も進行すると、本当にものが買いにくくなったことを実感します。生活に不要なものは買わなければいいだけですが、必要なものもぐっと高くなり、買うのに勇気が要ります。商品によっては、以前の2倍ほどになったように感じるものもあります。

 例えばクルマ。地方の工場に勤めているので生活にクルマは必須ですが、国産で200万円以上します。少し前まで身近になったと言われていた輸入車など、1~2割も価格が上がってしまいました。中古車価格も高騰してしまい、なかなか手が出ません。

 こんなことなら、もう日本を出ようと決意しました。それなりの大学を出ていますし、英語も日常会話くらいならできます。さらに技術大国日本で、長年技術者として第一線で働いてきました。きっと現地でも厚遇してもらえるでしょう。

 ――そう考えて、東南アジアに渡りました。現地の企業で、現地採用の社員として働き始めたのです。

思い知らされた勘違い

 しかしすぐに、自分の考えの甘さを思い知らされました。現地の大卒の同僚は、ほぼ全員英語がしゃべれます。日本人だからといって特に気を使ってくれるわけでもなく、ビジネス英語と現地の言葉で容赦なく会話が進みます。

 現地では「日本人は技術力が高い、仕事も丁寧で精緻だ」と思われていると聞いたので、もっと厚遇してもらえると考えていました。技術力や仕事の丁寧さがあれば、多少語学力に難があっても勝負できるとも思っていました。しかしそれは大間違いでした。