自分が今退職したら、職場に迷惑をかけるのではないか――。転職を具体的に考え始めた技術者の中には、こうした不安を口にする人がいます。それが気になって転職の踏ん切りがつかないケースもあります。
「転職先への情報の持ち出しを疑われるのでは」と心配する人もいます。同業他社への転職の場合は、特に気になるでしょう。
こうした人にご紹介したいのが、ジョブホッパーの仕事術です。ジョブホッパーとは短期間で転職を繰り返す人のことで、会社員時代の筆者もその1人でした。
ジョブホッパーの仕事術を象徴するのが執務机です。ジョブホッパーと呼ばれる人の多くは、机が常にきれいな状態に保たれています。日常的に整理整頓しておくことには、大きく2つの狙いがあります。
机もPCも普段から整理整頓
1つは、思い立ったらいつでも辞められるようにするためです。
心の中で転職の決意を固めた社員は、徐々に机の上を片付け始めたり、退職に向けた整理をしたりします。その様子から退職を見抜かれ、強い引き留めに遭うことがあります。
ジョブホッパーはこれを防ぐために、会社の机には業務に必要最低限のものしか置きません。机上だけでなく、引き出しの中もスッキリしています。
PCやサーバー上の共有フォルダーにも必要最低限のデータしか保存しません。過去のデータは、分かりやすいフォルダー名をつけて整理してあります。
この状態なら、転職を思い立ったらすぐに行動に移せます。周囲のブロック行為に遭う間もなく、退職できるでしょう。
なお、机やPCをこのように整理しておくことは、ジョブホッパーでなくても有益だと筆者は考えています。すぐに必要なデータにアクセスでき、机の上の作業空間も広くなるからです。業務効率が上がることは確実です。
情報共有をして部下を育てる
もう1つの狙いは、人材育成です。紙でもデジタルでも資料を整理整頓した状態にして、同僚や部下がいつでも参照できるように置き場所を知らせておきます。こうすれば自分がいなくても、仕事は回ります。
筆者も10回ほど転職を重ねましたが、退職後に前職の同僚から資料の在りかや業務の経緯について質問を受けたことは1度もありません。常に、仕事の経緯や結果、その際に活用した資料を共有していたからです。
部下にはこれらを基に、普段から報告や連絡、相談をしていました。部下にしてみれば上司が何をしているのか、何を考えて動いているのかが分かるので安心です。