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 この夏に開催された東京オリンピックで、筆者がとても印象的に感じたシーンがありました。若くしてスケートボードで入賞した選手に対してのインタビューをテレビで見ていたときのことです。質問の言葉や問いの内容をかなり平易にしている記者が多かったのです。

 社会人である年上の記者は、まだ若い選手の目線に合わせようとしたのでしょう。しかし筆者の目には、質問の中身やレベル感が想定と合わずに、選手が戸惑っていたように見えました。

 こうしたシーンは、実は職場でもよく目にします。若手部下のことを思ってしたことが空回りしてしまい、良好な関係を築けない――。そんなマネジャーの悩みを耳にすることも多いのですが、新入社員研修の講師や大学生のキャリア相談などを手掛ける筆者からすると、マネジャーが若手の特性を理解し切れていないために起こることだと感じます。

分からないことはすぐに調べるZ世代

 世代間の違いを整理するために、まず主な世代の名称を見ていきましょう。以下の表に筆者なりにまとめてみました。明確な定義はなく年齢の幅もかなり広いのですが、各時代の社会・経済情勢を背景に、思考や行動の傾向が似ているといわれています。

世代名生まれた年
ベビーブーマー1946~1963
ジェネレーションX1964~1980
ミレニアル世代1980~1994
ジェネレーションZ1995~2010
アルファ世代2010~2025

 この表でいうと、新入社員世代はジェネレーションZ(Z世代)に当たります。一方、マネジャーの多くはジェネレーションX(X世代)に該当するでしょう。

 Z世代の特徴は、モバイル端末によって常に他人や社会とつながっている状態を当たり前と感じていることです。オンラインとオフラインの境界線があまりなく、ソーシャルメディアにも多くが参加しています。

 Z世代は、インターネットによって情報を簡単に得られるのが当たり前の状態で育っています。何かの分野でプロになりたいと思えば、年齢や国籍に関係なく広く情報を集め、海外の識者ともつながることができます。一部の限られた大人としか情報交換しかせず、新聞・テレビなどのメディアだけで育ったX世代とは感覚や考え方が大きく異なります。

 オリンピックの受賞選手へのインタビューでも、その違いがあらわになったように思います。大人の感覚で繰り出された的外れな質問に対して、若い選手が「なぜ今、この質問?」と感じたのは当然だったでしょう。

 質問を受けたZ世代の選手は、多くの海外選手との交流を重ねてきたと考えられます。中高生の年齢だったとしても、その分野で世界的に活動するために必要な知識を豊富に持っていたはずです。それは、質問をした年上記者を大きくしのぐものだったかもしれません。