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 「3度転職したら、生涯賃金が3分の1になってもおかしくない」。転職相談に来た人に、筆者がよく伝えてきたことです。転職によって給与が下がる場合もあれば、賞与額に影響があることもあります。転職せずに元の会社で働き続けたときと比べると、生涯賃金が大幅に減るケースも珍しくないのです。

 しかし筆者のこの自説も、特定の職種に限っては通用しない時代になってきたようです。リクルートが2022年11月1日に発表した「2022年7-9月期 転職時の賃金変動状況」によれば、この期の転職決定者のうち、前職と比べて賃金が1割以上増加した人の割合は33.4%。過去最高値になったそうです。

 前職の給与が安すぎたのか、転職先の給与が高いのかは分かりませんが、10人のうち3人以上が1割以上の賃金アップを果たしたというのは見過ごせません。転職を給与アップの手段と捉えてこなかった筆者も、この数字には目を奪われました。

ITエンジニアの賃金上昇が目立つ

 給与は、当然ながら仕事選びの大きな要素です。新卒学生の就職人気ランキングの順位にも影響します。

 人気ランキング上位に「銀行、証券、金融」が並ぶ時代はとうに終わっています。現在、旬な職種の代表格がITエンジニアでしょう。今回のリクルートの発表でも、ITエンジニアの賃金上昇が目立ちます。ITエンジニア職の転職者で、前職と比べて賃金が1割以上増加した人の割合は38.7%。このところ伸長を続けており、過去最高値を記録したそうです。

 給与を最重視して転職するなら、早いうちにキャリアチェンジを決断するのも一つの手だといえるでしょう。既にITエンジニアとして働いている人がもっと条件の良い会社に転職するだけでなく、他業種からITエンジニアに転身する方法もあります。

 高給が成り立つのは、需要に対して供給が少ないからです。これからIT業界を目指す転職者が増えてきたら、需給のバランスが変わり、必ずしも給与アップが見込めなくなるかもしれません。

 IT業界の場合、ライバルは日本人だけではありません。日本語が理解できる海外のエンジニアが相手になることもあります。外資の金融系企業では、日本支社のIT部門がほとんどインド系のエンジニアで占められているといったケースもあります。

 筆者も、日本で働く外国人エンジニアから相談を受けることが増えています。先日は、ほぼ日本人がいない国内企業のIT部門で働いている中国人エンジニアから、他国の支社に所属する上司から受けているハラスメントについて日本語で相談されました。

 昨今の円安で、働く場所としての日本の魅力は低下しているという話もあります。ただ特にIT企業においては、海外エンジニアと職を争うシーンは今後もあるでしょう。