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 スマートフォン決済大手がしのぎを削る中で、国が推進する統一コード規格「JPQR」が苦戦している。乱立するコード決済をまとめて加盟店の運営を効率化できるとの触れ込みだったが、2年間の普及率は1.5%。10万店舗導入という目標の達成は厳しい状況だ。国策コードはなぜ受け入れられなかったのか。要因を探るとPayPayのしたたかな「手数料格差」戦略が見えてくる。

 「当初思い描いていたように普及は進んでいない。キャッシュレス決済そのものは新型コロナウイルス禍が後押しして普及したが、宣伝などの行動が制約されて全国的な普及活動がままならなかった」。総務省地域通信振興課の担当者はこう語る。JPQRの普及が進まないことに関する反省の弁だ。JPQRはキャッシュレス推進協議会が策定したスマホ決済の統一コード規格で、総務省は2019年度からJPQRの普及推進事業を担っている。

 JPQRは複数のコード決済を単一のコードにまとめて受け付けられる規格。2021年8月現在、PayPayや楽天ペイなど19のスマホ決済サービスが参加している。

統一QRコード規格「JPQR」の概要
統一QRコード規格「JPQR」の概要
(出所:総務省の資料を基に日経クロステック作成)
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 総務省らが挙げる加盟店側のメリットは、店頭のレジ横などに掲示するQRコードの台紙を1枚にまとめて、店舗運営を効率化できるというもの。店舗が掲示したQRコードを利用者のスマホで読み取る「MPM(マーチャント・プレゼンテッド・モード)」と呼ぶ決済方式の場合、店舗はQRコードを印字した台紙をレジ横などに設置するケースが多い。この方式の場合、スマホ決済サービスが増えるほど台紙の数も増えて、小規模な店舗には導入しづらい。1つの台紙だけで複数の決済サービスを導入できるとなれば、限られた店舗スペースでも多様なスマホ決済サービスを活用できるというわけだ。

「手数料が妨げに」、10万店舗の目標難しく

 2割程度にとどまるキャッシュレス決済の比率を2025年までに4割に高めるとの政府目標に沿って、総務省は2019年度からJPQRの普及促進事業に取り組んできた。同年度は岩手や長野など5県を対象に実施し、翌2020年度は対象を全国に広げた。

 ただ、現在の導入店舗数は1万2000店。全国に81万店近くあるとされる小売店のわずか1.5%にすぎない。

 総務省はJPQRの普及促進事業を2021年度で終了する。今後はキャッシュレス推進協議会に活動を移管する。「引き続き周知や広報について側面支援する」(地域通信振興課)とするものの、勢いがさらに減速するのは必至。2019~2021年度の3年間で普及促進事業に20億円の税金を投じたが、2021年度末に10万店舗という目標の達成は厳しい見通しだ。