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 「国策」の統一コードはなぜ有名無実化してしまったのか。最大の要因は加盟店が負担する決済手数料率の「格差」だ。

 JPQRに参加するスマホ決済各社は、JPQR経由で決済した場合の手数料を個別に定めている。自社サービスで直接決済した場合とは料率を変えているケースもある。JPQRを使えば店頭に設置する台紙を1枚にまとめられるが、店舗は導入するスマホ決済サービスごとに加盟店契約を結ぶ。JPQRの申し込みシステムを使って窓口自体は一本化できるが、決済手数料はスマホ決済サービスごとに負担しなければならない。

 最も顕著に差をつけているのがPayPayだ。JPQR経由の手数料率は2021年9月30日まで2.59%(税込み)、10月以降は3.24%(同)だ。一方、PayPay直接の場合は9月末まで無料、10月以降は最大1.98%である。スマホ決済最大手のPayPayが露骨に差をつけていては、店舗にとってJPQRを導入する動機は薄いと言わざるを得ない。

主なスマホ決済サービス(コード決済)のJPQRと直接の手数料の比較(2021年8月時点)
サービス名(事業者名)JPQR経由の手数料率直接の手数料率
PayPay(PayPay)2.59%(2021年9月30日まで、税込み)、3.24%(2021年10月以降、税込み)無料(2021年9月30日まで)、1.6%または1.98%(2021年10月以降、税別)
楽天ペイ(楽天ペイメント)3.24%(楽天カードの場合は全カードブランド、楽天カード以外の場合はJCB以外、税込み)、3.74%(楽天カード以外でJCBブランドの場合、税込み)3.24%(楽天カードの場合は全カードブランド、楽天カード以外の場合はJCB以外、税込み)、3.74%(楽天カード以外でJCBブランドの場合、税込み)*1
au PAY(KDDI)無料(2021年9月30日まで)、2.6%(2021年10月以降、税別)無料(2021年9月30日まで)、2.6%(2021年10月以降、税別)*2
d払い(NTTドコモ)1.8%(2021年6月30日まで、税込み)、2.86%(2021年7月以降、税込み)2.6%(税別)*3
LINE Pay(LINE Pay)無料(2021年9月30日まで)、1.98%(2021年10月以降、税別) *4無料(2021年9月30日まで)、1.98%(2021年10月以降、税別)*4
メルペイ(メルペイ)無料(2021年6月30日まで)、2.6%(2021年7月以降、税別)無料(2021年6月30日まで)、2.6%(2021年7月以降、税別)
(出所:JPQRの資料と各社の公表数字を基に日経クロステック作成) *1 2021年10月1日から2022年9月30日までの無料を発表済み。年商10億円以下の新規加盟店が対象 *2 2022年9月30日までの無料期間延長を発表済み *3 2021年9月1日から2022年9月30日までの無料を発表済み。d払いとメルペイの共通QRコードを新規に導入する加盟店のうちd払いのみが対象 *4 当初は2.45%(税別)を予定

 「(手数料率の格差が)JPQR普及の妨げになっているという認識はある。参加各社と協議して、手数料率を下げてもらうよう依頼していた」。総務省地域通信振興課の担当者はこう明かす。ただ、PayPayからは「高いシェアを持つ事業者にとって、JPQRに参画するメリットはない」といった趣旨の回答があったという。

「うちとは別物」とPayPay、政府は納税などに活用へ

 PayPayの対応はにべもない。「JPQR向けの手数料率を変更する予定はない。決済システムなどのコストを負担する必要があり、当社のサービスとは別物と考えている」。笠川剛史営業統括本部長執行役員はこう言い切る。

 総務省は「新型コロナ禍で全国を回る広報宣伝活動が制約され、JPQRの知名度を高められなかった」(地域通信振興課)のも一因と話す。ただ、同じ期間にPayPayをはじめとするスマホ決済各社は全国の加盟店開拓に励んだ。結果としてPayPayが46.1%のシェア(MMD研究所調べ)を獲得して1強となり、店舗にとっては複数のコード決済サービスをまとめるJPQRを導入する動機がますます乏しくなった。

 「スマホ決済事業者同士の競争を促進する意味でも統一コードの意義はある」。キャッシュレス推進協議会の福田好郎事務局長はこう強調。2021年度は請求書払いを可能にするなどの検討を進め、普及を促す考えだ。

 さらに政府はJPQRを使って地方税を納税できるよう規格を取りまとめる。2023年度の納税分から利用できるようにする方針だ。納税や公共料金の納付といった公共分野での導入が進めば、JPQRの普及に弾みが付く可能性もある。