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 「中小加盟店における決済手数料の引き下げに向けた方策を検討する上では、(中略)コスト構造全体を可視化した上で、各コストの適切性を検証すべきだ」。2021年8月27日、経済産業省が主催する「キャッシュレス決済の中小店舗へのさらなる普及促進に向けた環境整備検討会」は2021年度の第1回会合でこう宣言した。

 2025年に国内のあらゆる決済に占めるキャッシュレス決済比率を金額ベースで4割に高めるとの政府目標に沿って、同検討会は特に中小規模の小売店や飲食店にキャッシュレス決済を普及させるための課題と解決策を議論する。具体的には決済手数料の負担の重さや導入のメリットの見えづらさがキャッシュレス決済普及のネックになっていると判断。手数料引き下げを視野に、主なキャッシュレス決済のコスト構造分析に向けた論点を2020年度末に「中間整理」として取りまとめた。この結果を出発点に、2021年8月から2022年2月にかけて検討会を開いて議論する。クレジットカードや電子マネーと並ぶ検討対象が、QRコードを使ったスマートフォン決済だ。

「許容範囲は2%」が8割、実態との差を問題視

 経産省が決済手数料引き下げに向けてコスト構造にメスを入れるのはなぜか。最大の要因は中小加盟店がイメージする手数料率の許容範囲とスマホ決済事業者が定める手数料率の差にある。

 経産省は2021年1月~3月に全国の中小企業を対象に、スマホ決済をはじめとしたキャッシュレス決済導入の実態や意向を調べた。キャッシュレス決済の導入条件を聞いたところ、手数料率の上限については「2%台まで」とする回答が全体の8割超を占めた。「2%台前半まで」との回答に限っても4分の3を占めた。「0%台」との回答も25%あった。

キャッシュレス決済の導入条件(手数料率の上限)
キャッシュレス決済の導入条件(手数料率の上限)
(出所:経済産業省)
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 大手スマホ決済事業者が定めるコード決済の手数料率は2.6%や3.24%。4分の3の中小企業にとって許容範囲の上限を超える。調査当時はキャンペーンなどで無料としていた事業者が多かったが、いずれは有料になると告知されていて利用企業には導入への壁になっていたとみられる。

 経産省はキャッシュレス決済を導入していない理由についても調べた。全体の回答は「客からの要望がない」が最多、「手数料が高い」が2位だった。飲食店や小売業に限ると、「手数料が高い」がそれぞれ1位だった。8月27日の検討会では「客からの要望がない」との回答について、参加メンバーから「実際には消費者がキャッシュレス決済可能な店舗を選別しており、店舗が気づかないうちに機会損失が発生している可能性がある」との意見があった。