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 「楽天モバイルのユーザーは早晩、2000万から3000万規模になっていく」「楽天モバイルのユーザーの62.9%が楽天市場で買い物をしている」「楽天モバイルを契約すると契約前に比べて77%も楽天市場での買い物が増える。衝撃的だ」――。

 2021年9月2日、楽天グループがインターネット通販サイト「楽天市場」の出店者向けに開催したオンラインイベント「楽天EXPO 2021」。三木谷浩史会長兼社長はとうとうと語りかけた。

 楽天市場は外部の小売業者に出店してもらい品ぞろえを充実させるショッピングモール型のEC(電子商取引)サイトだ。出店者は楽天グループにとって仲間であり同志と言える。その同志の理解を求めるかのように、三木谷会長は楽天モバイルの「楽天経済圏」へのシナジー(相乗効果)を繰り返し強調した。なぜなら、莫大な投資が続く楽天モバイルへの懸念を少しでも払拭したいからだ。

 2017年12月に携帯電話事業への新規参入を表明した楽天グループ。通信市場の監督官庁である総務省が同社の参入を認めたのは2018年4月のことだった。異業種からの新規参入によって大手3社の寡占が崩れ、新たな料金競争が始まる――。そうした消費者の高い期待と政府の後押しを受け、楽天グループ子会社の楽天モバイルは2019年10月に試験サービス、次いで2020年4月に本格サービスを立ち上げた。

 しかし、楽天モバイルはこれまでのところ紆余曲折の連続だ。基地局などの整備の遅れや通信障害でたびたび行政指導を受けた。それにも増して政府や投資家などから注視されているのが財務の健全性についてだ。楽天グループが2021年8月11月に開いた決算説明会。三木谷会長は楽天モバイルの黒字化時期について「2023年度の目標は少し前倒しすることも可能だ」と語り、財務改善に自信を見せた。だが、描く成長シナリオ通りに進むのか。

決算説明会で楽天モバイルの黒字化時期について「少し前倒しすることも可能」と語った楽天グループの三木谷浩史会長兼社長
決算説明会で楽天モバイルの黒字化時期について「少し前倒しすることも可能」と語った楽天グループの三木谷浩史会長兼社長
(出所:決算会見の中継をキャプチャー)
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ECと金融の稼ぎを携帯が打ち消す

 実は楽天グループの主力事業は一見すると順風満帆だ。2021年1~6月期連結決算(国際会計基準)で売上高に当たる「売上収益」は前年同期比17%増の7936億円だった。セグメント別に見ると、EC主体の「インターネットサービス」は589億円の黒字(前年同期は21億円の赤字)、クレジットカードや銀行など「フィンテック」の営業利益も前年同期に比べて15%増の470億円となった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い巣ごもり消費の需要が伸び、ECの利用が一段と拡大したためだ。クレジットカードのショッピング取扱高は4~6月期に前年同期比34%も増加した。