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 「この3年間、どぶ板営業のように泥臭く、時速100kmでほふく前進するような感覚で基地局を増やしてきた。まだ途上段階だが、顧客の声にスピーディーに対応してこれからも愚直に進めたい」。

 楽天モバイル(以下、楽天)で基地局のエリア展開を統括する矢澤俊介副社長はこう打ち明ける。同社の基地局整備は、展開の遅れから行政指導を繰り返し受けた2年前と大きく状況が変わった。今や「月3000~4000局ペースで増えており、実際に電波を発射している基地局は3万局近く」(矢澤氏)に達した。インフラ展開をこれほどまで急ぐ狙いは、「2重投資状態」で同社の財務悪化を招いているKDDIとのローミング(相互乗り入れ)の早期オフだ。同社の命運を左右する基地局展開の最新状況に迫る。

目に見えて増えた基地局、人口カバー率90%超に

 楽天グループは21年8月に開いた決算説明会で、21年6月末時点における自社4G基地局の人口カバー率が90%を超えたと明らかにした。総務省の公表値によると、楽天の20年12月末時点の基地局数は1万984局、人口カバー率は48.5%。矢澤氏の言葉通り月3000~4000局のペースで基地局数が増えているならば、確かに21年9月時点で3万局ほどに達する。

楽天の基地局数と人口カバー率の推移
楽天の基地局数と人口カバー率の推移
(出所:総務省と楽天の公表値を基に日経クロステック作成)
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 楽天は21年2月、人口カバー率96%を達成するために約4万4000局の基地局を設置する新たな方針を示した。当初は約2万7000局で人口カバー率96%を達成する計画だった。その目標感からしても、約3万局に達した現時点で人口カバー率90%を超える規模にエリアが広がっていることを裏付ける。

「CellMapper」で見た楽天基地局の設置状況
「CellMapper」で見た楽天基地局の設置状況
(出所:CellMapperの画面をキャプチャー)
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 普段から楽天の携帯電話サービスを利用する筆者にとっても、ここに来て楽天の基地局を目にする機会が増えてきたと実感する。そこで利用者の接続状況を基に基地局のおよその位置をマッピングするサービス「CellMapper」を参考にしながら、東京23区外れの筆者宅周囲の楽天基地局を実際に探してみた。同社の基地局はアンテナ部分のすぐ後ろに無線機をはめ込んだ特徴的な形状なので、すぐに見分けられる。筆者宅の周囲では、1km程度の間隔ですぐに10局ほど見つかった。

筆者宅付近の楽天基地局。10局ほどがすぐに見つかった
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筆者宅付近の楽天基地局。10局ほどがすぐに見つかった
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筆者宅付近の楽天基地局。10局ほどがすぐに見つかった
(撮影:日経クロステック)

 もっとも携帯大手の基地局のアンテナが、5階建て以上のマンション屋上など好立地を占めるのに対し、楽天の基地局は3~4階建ての低層マンションがほとんどだった。基地局は設置場所が高いほど、遠くまで電波を飛ばせる。後発の楽天は苦労しつつ、基地局を増やしている様子がうかがえる。

「無手勝流」のインフラ設営も3年で定着

 基地局の展開に当たっては、(1)地権者やビルオーナーとの交渉による設置場所の確保、(2)用地調査と建設準備、(3)実際の建設作業、という3段階のフェーズをひたすら繰り返すしかない。楽天が過去にアピールしてきた仮想化のメリットも後発の強みも関係なく、矢澤氏が冒頭で語ったように非常に泥臭い作業だ。

楽天モバイルで基地局展開を統括する矢澤俊介副社長
楽天モバイルで基地局展開を統括する矢澤俊介副社長
(出所:楽天モバイル)
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 同社の基地局展開はこれまで順風満帆だったわけではない。特に当初のサービス開始予定だった19年10月時点における整備の遅れは深刻だった。19年3月、7月、8月と立て続けに総務省の行政指導を受け、本格サービス開始の半年延期を余儀なくされた。