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経済産業省と東京証券取引所が年次で発表する「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄」。2021年6月発表のDX銘柄2021では「デジタル×コロナ対策企業」の部門を設け、コロナ禍においてデジタル技術を活用し優れたコロナ対策を講じている企業11社を選定した。選定企業の1社、ヤマト運輸はEC事業者向けサービスの「EAZY」でコロナ対策のDXに取り組んでいる。

 コロナ禍でEC(電子商取引)サイトの利用が増え、非対面での受け取りなど利用者の宅配ニーズが多様化した。そうしたニーズに応えるため、ヤマト運輸は2020年6月に始めたEC事業者向けサービスの「EAZY」で配送サービスのデジタル化に取り組んでいる。ヤマト運輸の齊藤泰裕EC事業本部ゼネラルマネージャーは「Eコマースは利用者が自分で注文して自分で受け取る形態だ。置き配や時間などの配送希望の指定・変更も含めてデジタルで完結できる」と狙いを語る。

 EAZYによって利用者は配達方法や日時を指定できる。配達方法についてはヤマト運輸と契約しているECサイトでの注文時に、対面での手渡しだけでなく、玄関前への置き配や宅配ロッカーなどを指定する。登録した配達希望場所や時間は配達の直前でも変更が可能だ。利用者が登録した要望はリアルタイムでシステムに反映され、配達員は荷物を届ける直前に手元の端末で利用者の要望を確認する。例えば在宅勤務のとき、オンライン会議が始まる直前に置き配に変更するといったことが可能だ。

 同社はEコマース専門の配達部隊を組織している。「EAZY CREW」と呼ばれる配達員は2020年度末時点で全国に約1万6000人に上る。EAZY CREWは専用アプリで荷物のバーコードを読み込み、利用者が指定した配達場所を確認する。置き配の場合、指定場所に荷物を置いたらその状態を撮影して登録する。配達員が登録した写真は配達完了通知とともに利用者に届く。いつ、どこに荷物が置かれたかを利用者が確認できる仕組みだ。

EAZY CREW専用アプリの画面
EAZY CREW専用アプリの画面
(出所:ヤマト運輸)

 「作業効率化のための置き配は考えない。デジタルを使ったサービス品質向上が最優先だ」と齊藤ゼネラルマネージャーは強調する。変化する顧客ニーズへの対応は現場の負担増につながる可能性もあるが、配達員の反応は上々だという。齊藤ゼネラルマネージャーは「これまで配達員は利用者の自宅などの配達先に行くまで、家にいるのか、旅行で長期不在なのかといった状況を知ることができなかった。EAZYの導入で、配達前に利用者とコミュニケーションを取る手立てを得た」とその要因を明かす。

 配達網の整備にも取り組んでいる。ヤマト運輸のパートナーショップやコンビニエンスストアなど、利用者が生活動線の中で荷物を受け取れる拠点を広げている。「いつ届くか分からない荷物を待つより、都合のいい時間に自分で受け取りに行きたいとの顧客ニーズがある。受取場所を増やすことでニーズに応える」(齊藤ゼネラルマネージャー)。