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 経済産業省と東京証券取引所が年次で発表する「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄」。2021年6月発表のDX銘柄2021では「デジタル×コロナ対策企業」の部門を設け、コロナ禍においてデジタル技術を活用し優れたコロナ対策を講じている企業11社を選定した。選定企業の1社である東急不動産ホールディングス傘下の東急ハンズは店舗の人気スタッフによる「オンライン接客」に取り組んでいる。

 「軟らかい枕だと寝違える可能性が高まるので、ある程度しっかりしたものがお薦めです。幾つかご紹介しますね」。画面越しにこう案内するのは、東急ハンズ新宿店5階にある「ぐっすりスヤスヤ商店」の金森靖店主だ。寝具についての豊富な知識を生かして、顧客1人ひとりの相談に乗る。

 これは、東急ハンズが2021年6月に始めた「オンライン接客」の1コマである。店舗の売り場にいるスタッフがビデオ通話で、自宅などにいる顧客1人ひとりに接客する。オンライン接客は予約制で、スタッフは時間ごとに1人の顧客だけに応対する。オンライン接客のWebページには新宿店、渋谷店、梅田店の各フロアにあるそれぞれの売り場の取扱商品、担当スタッフや相談できる内容の案内が並ぶ。店舗と同じように、寝具や化粧品、DIYといった特定の商品分野に詳しい人気スタッフに相談できるのが特徴だ。

 東急ハンズの照井慰デジタル戦略部部長はオンライン接客を始めたきっかけを「危機感」だと話す。新型コロナ禍で通信販売の需要が高まったこともあり、特に都市型の大型店舗で来客数が減っているという。そこで「店舗での接客機会が減った分、オンライン接客で販売機会の損失を防ごうと考えた」(照井部長)。

実際に売り場でタブレットに向かって接客する金森店主
実際に売り場でタブレットに向かって接客する金森店主
(出所:東急ハンズ)

 ビデオ通話のツールには、ビデオチャットシステムなどを手掛けるスピンシェル(東京・文京)の「LiveCall」を採用した。店舗にいるスタッフはタブレットを持ち、カメラで売り場にある商品を映しながら顧客と会話する。金森店主の場合、顧客の悩みを聞いた上で、約80種類ある枕など売り場の商品からお薦めのものをピックアップ。構造・素材による通気性、耐用年数の違いなど専門的な情報も交えて商品を紹介する。

 オンライン接客では受注まではできず、顧客にEC(電子商取引)サイトにアクセスしてもらったり来店してもらったりして販売につなげる。「枕はまったく違うタイプの商品を数種類試した方がいい」という具合に、来店する際のアドバイスをすることもある。金森店主は顧客から改めて店舗で直接相談したいとの要望を受けるケースが多いという。