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 優れたIT活用事例を毎年表彰し、今回で15回目となる日経コンピュータ主催の「IT Japan Award 2021」。特別賞に選ばれたのはきらぼし銀行、東京海上ホールディングス、三越伊勢丹、LIXILの4社だ。新型コロナウイルス禍で各社とも事業活動が大きな制約を受けるなかでも、各社は勘定系システムの刷新や画期的な新サービスの開発、2万5000人規模の迅速な在宅勤務への移行などを進め、ウィズコロナ・アフターコロナに向けた足がかりをITによって築いた。

きらぼし銀行
コロナ禍のシステム統合 Day1障害乗り越え完遂

きらぼし銀行の北川嘉一会長(左)、きらぼしデジタルバンク設立準備会社の白石雅巳取締役
きらぼし銀行の北川嘉一会長(左)、きらぼしデジタルバンク設立準備会社の白石雅巳取締役
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 「3行統合で苦労したDay1の失敗を乗り越えて地道な努力を続け、Day2に臨み結実させた。新型コロナも流行するなか、企業文化の異なる旧3行を取りまとめたことを評価したい」(審査委員の伊藤氏)。

 特別賞のきらぼし銀行は旧東京都民銀行と旧八千代銀行、旧新銀行東京の3行が2018年5月に合併して発足。3行の勘定系システムを、都民銀が使っていたNTTデータの共同利用型センター「STELLA CUBE」に片寄せして統合した。3行統合によるコスト削減目標は年間100億円超、うちシステム関連は2022年度に約25億円のコスト削減を見込んでおり、きらぼし銀にとってシステム統合は悲願だった。

 システム統合は大きく3段階に分けて進めた。まず2017年10月までの「Day0」と呼ばれるフェーズで八千代銀の支店番号を順次変更。2018年5月の「Day1」では新銀行東京のシステムを都民銀側に統合したうえで、八千代銀のシステムと接続した。さらに2020年5月の「Day2」で、都民銀と八千代銀のシステムを都民銀側に片寄せした。システム統合や顧客対応などの総投資額は約200億円だ。

図 きらぼし銀行のシステム統合スケジュール
図 きらぼし銀行のシステム統合スケジュール
新型コロナが猛威を振るうなかでシステム統合を果たした(東京きらぼしフィナンシャルグループの資料をもとに日経コンピュータ作成)
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 だが、2018年5月の3行合併直後にシステム障害が発生。データ移行の作業漏れなど3つの障害が重なり、振り込み遅延は約1万6000件に上った。

 Day1での苦い経験を踏まえ、Day2では再発防止のためプロジェクトの推進体制に気を配った。具体的には統合プロジェクトチーム内に「共通・横断チーム」を設け、メガバンクでシステム統合を経験した人など外部有識者を招へい。詳細設計の検証にまで踏み込み、問題点を洗い出した。

 従来のNEC製からNTTデータ製に切り替わる旧八千代銀の行員の不安を軽減するためにきらぼし銀が採用したのが「ペア店」という仕組みだ。旧都民銀と旧八千代銀の店舗がペアを組み、営業店試験などの際に旧都民銀の担当者をインストラクターとして旧八千代銀の店舗に派遣した。

 Day2期間は統合以外の開発案件を段階的に抑止しシステム部門をプロジェクトに集中させる、毎朝10分ほど開く朝会で総合試験の進捗を共有する、工程管理を人月ベースでなく個人単位で把握するなどの工夫も織り交ぜた。

 Day2の統合日は新型コロナの第1波で全国に緊急事態宣言が出ていた2020年5月6日。全関係者を2つのチームに分け、交互に在宅勤務とするなど感染対策を徹底した。ITベンダーも開発担当のキーマンの勤務場所を分けるなどした。そのかいもあり、協力会社を含め感染者を出すことなく、予定通り統合作業を完遂した。