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イヤホンの肝は何と言っても音質。入手したニセAirPods Proが果たして良い音を鳴らすのか。日経クロステックは専門家に依頼して、本物と偽物それぞれのスピーカー特性を測定した。

 「これはもしかすると、正規品と同じ金型を使ってつくったのかもしれない。(正規品の製造工程にいた人間が)退職する時に流出させた可能性もある」

 イヤホンメーカーのオーツェイド(群馬・高崎)代表取締役社長の渡部嘉之氏は、偽物を見た途端、外観の再現度の高さにうなった。

分解と音響測定を実施したオーツェイドの渡部氏
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分解と音響測定を実施したオーツェイドの渡部氏
(写真:加藤康)

 有線式イヤホンを開発するオーツェイドは、イヤホンには珍しい圧電セラミックスを生かした音づくりに特徴がある。自ら製造を手掛け、音にこだわりのある同社なら、ニセAirPods Proの品質や音質を丸裸にしてくれるのではないか。そう考えて分析を依頼すると、快く引き受けてもらえた。

 渡部氏としては偽物と本物のスピーカー特性が気になるという。この測定のためには、偽物と本物のスピーカーに直接、導線をつなげて有線イヤホンにしなければならない。そこでまず、イヤホンのケースを分解した。イヤーピースを外してイヤホンにヒートガンの熱風を当て、接着剤を溶融していく。その後、切れ込みに沿って薄いピックを入れて、こじ開けた。偽物は接着剤を使わずに単にはめ込んであるだけなのか、すぐに開けられたが、本物はピックを入れる場所が見つからず、熟練の技術者でもてこずった。

本物(左)と偽物(右)のケースを開いたところ
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本物(左)と偽物(右)のケースを開いたところ
本物のイヤーピース側にある黒い丸型の部品がリチウムイオン2次電池である。偽物では金色に包装されているのがそれである(写真:加藤康)

 「うわ。これはひどい。百円ショップのイヤホン並だ」

 ケースを開けた瞬間、渡部氏がそうつぶやいた。偽物は外観こそ似せていたが、見えない部分がとても粗雑につくられていたのだ。これではまるで電子工作の授業で学生がつくる程度の代物である。

 スピーカーの特性を調べるために、スピーカーとアンプをつなぐ導線を切断し、代わりにイヤホン端子を持つ導線をスピーカーの端子にはんだ付けする。測定時には、このイヤホン端子を専用装置に挿す。専用装置からヒトの可聴域にあたる音声信号を出して、イヤホンの外に設置したマイクで音を測るわけだ。

測定のために製品を改造
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測定のために製品を改造
スピーカーから直接導線を出すことで、有線イヤホンにした(図:日経クロステック)

 ここで注意しなければならないのは、ケースが開いたままだとイヤホンの音響が大きく変わり、本来の音とはかけ離れてしまうことだ。そこできょう体に小さな穴を開けて導線を外に出し、穴をふさいだ上でイヤホンを再び閉めることで元の音響環境に戻した。

有線接続になったAirPods Pro
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有線接続になったAirPods Pro
(写真:加藤康)
イヤホンの周波数特性を調べる装置
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イヤホンの周波数特性を調べる装置
(写真:加藤康)
AirPods Proを装置にセットしたところ
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AirPods Proを装置にセットしたところ
人間の聴覚器官と同じ位置に設置されたマイクで音を集めて分析する(写真:加藤康)