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 外資系のIT企業やコンサルティングファームの一部では、新卒・中途採用で「ケース面接」を実施することが知られています。あるお題を与え、制限時間内に答えをまとめることを求める面接の形式です。

 ここで使われるのが、前回も解説したフェルミ推定の考え方です。フェルミ推定は面接で必要なものと考えている人も多いでしょう。

 こうした面接に臨む候補者の多くは「できるだけ正しい数値を導き出そう」とします。しかし面接官が合否を判断する際、正しい数値を導出したか否かは重要視していません。どれだけ柔軟に、そして論理的に、漏れなくダブりなく構造化して考えをまとめ、現実的に計算できそうな式を作れたかどうかを評価します。

 今回は、ケース面接のような難しいお題が出たときに役立つ、フェルミ推定のテクニックを紹介します。ぜひ覚えていただきたいポイントは「その製品が使われるシーンを想像し、分解・整理すること」です。

 このテクニックは、面接だけでなく実務でも役に立ちます。複雑な事象を構造的に分解して議論しやすくなりますので、ぜひ覚えておいてください。

日本で1年間に消費される注射針は何本?

 以下は、候補者として採用面接に臨んだ渡辺さんと、面接官とのやり取りです。

面接官:「日本で1年間に消費される注射針は何本か教えてください。点滴針も含みます」

渡辺:(注射針といってもいろんな使われ方があるからなぁ)「……(沈黙)」

 与えられたお題は、ある製品の消費量の導出です。このような質問をされて、「正しい数値を1つ導き出そう」と考えるのは賢明とはいえません。「発想の幅が広いこと」「構造的に物事を分解して説明できること」を面接官にアピールしようと努めるのが得策です。

 今回のように複雑で難しい質問をされたら、まずは対象となる利用シーンをできるだけ想像してみるとよいでしょう。今回渡辺さんに与えられた注射針のお題を基に説明します。フェルミ推定の解説を目的としており、医学的に正しい内容ばかりではないかもしれないことをご理解ください。

 渡辺さんは、「注射針」という言葉から医療の現場を中心に想像しました。このように対象製品の利用シーンをいくつか想像できたら、それぞれの共通点を考えてグループ分けをします。

注射針が使用されるシーンを想像する
注射針が使用されるシーンを想像する
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 渡辺さんは、糖尿病患者が日常的に用いるインスリン注射もカウントすべきだと考えています。これはとても良い視点です。私たちは「注射」と聞くと病院を連想しがちですが、渡辺さんは患者自身でも打つインスリン注射を想像できたことで、病院以外の利用シーンも考慮に入れられるようになります。

 注射にも、「病院で打つ注射針」もあれば「病院以外の場所で打つ注射針」があることに気づけるわけです。さらに「患者自身が打つ注射針」と、「医療従事者が打つ注射針」があることにも気づけるでしょう。

 また渡辺さんは予防接種を挙げることもできました。そこから「入院せずに打つ注射針(外来)」もあれば、点滴のように「入院患者に打つ注射針」があると分かります。

 このような気づきをグループ分けして整理すると、以下の図のようになります。

注射針が利用されるシーンを分解
注射針が利用されるシーンを分解
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