「なぜ弊社を志望しますか?」――面接で最もよく出るのが、志望動機を尋ねる質問です。
採用面接に臨む人は、自分の思いが上手に伝わり、他の応募者とも差異化できる志望動機を用意しようと頭を悩ませます。しかし本人が頑張って考えた志望動機でも、面接官からすると一方的なラブコールやリップサービスに聞こえてしまうことがあります。
こうした事態を避け、面接官に評価される志望動機をつくるには、2つの要素を含める必要があります。(1)応募企業に対するあなたの理解、(2)あなた自身についてです。
(1)は「自分は志望企業をこのように捉えている」というあなたの理解です。(2)は「自分は過去にこんなことを経験しており、この会社でこれを実現したい」という思いです。この2つがそろうことで、「なぜこの会社を志望するか」を説明できます。面接では常に、志望する会社の実態と、あなたの経験やスキルがかみ合っていることをアピールする必要があるからです。
実際には、(1)(2)のどちらか一方しか話さない応募者が多くいます。(1)だけだと、あなた以外の応募者も似たような内容を話すでしょう。会社に対するあなたの理解は面接官に伝わるかもしれませんが、あなた独自の志望動機とはなりえません。単に「この会社をよく理解していて、憧れている」という一方的なラブコールになってしまいます。
(2)だけの場合ではどうでしょう。あなた自身のアピールにはなりますが、そのような経験をしたあなたがなぜ「他社ではなくその会社を志望するのか」が、面接官に伝わりません。その会社が第1志望だと伝えたとしても、面接官にとっては根拠のないリップサービスにしか聞こえないでしょう。
経営トップのインタビューにヒントがある
ここからは、2つの要素のうちの(1)を考える方法について詳しく説明します。応募企業に対するあなたの理解として何を説明するかは、「業界の理解」と「業界内でのその企業のポジション」に分けて考えるとよいでしょう。また「業界内でのその企業のポジション」は、「現在のポジション」と「その企業が目指している将来のポジション」に分解できます。
「業界の理解」とは、あなたがその業界をどう捉えているかです。ここでは、業界の世の中における役割をあなたが理解できていることをアピールしましょう。
分かりやすい例として、コンサルティング企業への入社を目指す場合を考えてみます。コンサルタントとはアドバイザーであり黒子です。企業目標の実現性を高めるための道を示す役割を担っています。しかし、企業経営そのものを担うわけではありません。応募者が「コンサルティング会社では企業経営に携わることができ、将来は自分も経営をやってみたい」などと話したら、面接官は「この人は業界の役割をきちんと理解していない」と捉えて評価を下げるでしょう。