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地方銀行は2000年ごろから、勘定系などのシステム共同化に突き進んだ。大半の地銀が共同化に参画するも、運用コストは高止まりしている。地銀界の盟主である横浜銀行が踏み出した一歩は業界に大きなうねりをもたらす。

 「勘定系システムに戦略的な位置付けを持たせてはいけない。勘定系を記帳機能に特化させていけば、極端な話、(全国地方銀行協会に加盟する)地銀62行で勘定系は1つという形も将来的に十分あり得るのではないか」。地銀でトップの預金量を誇る横浜銀行の大矢恭好頭取は地銀システムの未来をこう見据える。

 勘定系システムの機能を絞り込み、今より多くの地銀で共同利用することで、各行が負担する勘定系の運営コストを一段と減らす――。大胆な将来像に向け、横浜銀行が一歩踏み出した。

 それが横浜銀行を中心に、北陸銀行や北海道銀行、七十七銀行、東日本銀行の全5行が参画する共同利用システム「MEJAR」のオープン化だ。5行とNTTデータは2024年1月、同社製勘定系パッケージ「BeSTA」の動作プラットフォームを富士通のメインフレームからLinux基盤に移行する予定だ。

「コスト削減で決算を組み立てる」

 横浜銀行の一手は、地銀を取り巻く苦境の裏返しでもある。低金利の長期化や地方経済の衰退を背景に、顧客から集めた預金を貸し出しや市場運用に回す従来型のビジネスモデルは今や限界にきている。

 「ここ2~3年、地銀はコスト削減で決算を組み立てる傾向が顕著だ」。こう話すのは金融庁の今泉宣親監督局銀行第二課地域金融企画室管理官である。「決算を組み立てる」とは、収益源が先細り、成長ではなくコスト削減で利益を捻出しているという意味だ。

 コスト削減の対象として、地銀平均で年50億円弱のコストがかかる勘定系を中心にしたシステムに焦点が当たっている。特に地銀の大半が参画する「システム共同化」に対するコスト削減圧力が増している。

 その方向性を決定付けたのが、金融庁が2020年から公表を始めた「金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート」だ。ITコストの効率性を測る指標として「(年間の)システム経費/預金量」を使い、地銀と信用金庫を比較したところ、地銀は0.17%、信金が0.11%で、地銀が信金に劣ることをデータで示した。

図 システム共同化の現状と今後の方向性
図 システム共同化の現状と今後の方向性
地銀の大半が参画する「システム共同化」でコスト高が課題に(注:預金量やシステム経費は2020年度、出所:金融庁の資料などを基に日経コンピュータ作成、写真:Getty Images)
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 例えば共同化の利用が長期にわたり、システムの規模が膨れ上がったり、中身が複雑になったりした結果、他システムへの切り替えが難しくなる「ベンダーロックイン」の状況に陥っている恐れがある。これらはシステムコストの増加として跳ね返ってくる。今泉管理官は「システムの合理化が不十分なのではないか」と問う。

 こうした状況で、地銀トップの横浜銀行が一歩踏み出した意義は大きい。他の地銀やITベンダーの改革の動きを加速させる可能性が高いからだ。

 横浜銀行はMEJARのオープン化に当たって、業務要件や業務アプリケーションに原則手を加えない「リホスト」を採用した。業務要件と業務アプリの両方を新たにつくり替える「リビルド」も選択肢に挙がったが、リスクとコストの両面で「リビルドまでやる必要があるのかという議論になり、リホストに自然と落ち着いた」(横浜銀行の小貫利彦執行役員ICT推進部長)。