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邦銀で初めて既存の勘定系システムのクラウド全面移行を果たした北国銀行。そのDXの取り組みに金融庁やライバル行も一目置く。「独立独歩」で突き進む同行の戦略は、他行の見本となりつつある。

 「地方銀行の中ではDX(デジタルトランスフォーメーション)で1歩も2歩も先を行っている」。金融庁がこう評し、地銀のシステム共同化から距離を置く北国銀行は、杖村修司頭取自らが旗振り役となり、DXを核にした事業構造転換を進めている。その過程で、2021年5月に既存の勘定系システムをパブリッククラウドに全面移行した。邦銀初であり、異例といえる。

図 北国銀行の経営やDXの主な歩み
図 北国銀行の経営やDXの主な歩み
邦銀初、既存の勘定系システムをパブリッククラウドに全面移行(写真提供:北国銀行)
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 具体的には、Windows上で動作する日本ユニシスのオープン勘定系パッケージ「BankVision」を米マイクロソフトのパブリッククラウドである「Microsoft Azure」上で稼働させた。稼働から4カ月以上が経過したが、クラウドに起因する不具合は限定的。北国銀行の新谷敦志システム部長は「安定して稼働している」と話す。

 実は北国銀行も勘定系システムの共同化を検討したことがある。日本IBMのITアウトソーシングサービスを利用していた2010年ごろのことだ。「(共同化すれば)商品やサービスの開発にかなり制約があり、思い描いていた銀行像と違ってしまう」(新谷部長)として断念した。

 北国銀行はこれ以前からシステムの設計開発から運用までを主体的に手掛け、技術革新や顧客ニーズの変化に合わせて独自の商品/サービスを迅速に投入する青写真を描いていた。青写真を実現するために選んだのがBankVisionだった。

 BankVisionは日本ユニシスがITインフラの運用支援や制度対応を手掛ける一方、「アプリケーションの開発は銀行が担う」(日本ユニシスの井上康弘ファイナンシャル第三事業部ビジネス二部長)。共同化と比べると銀行側の開発負担は大きい半面、当然ながら開発の自由度は高い。

杖村氏が米本社に直談判

 北国銀行は2015年1月にWindowsサーバー上でBankVisionを稼働させた当初から、クラウド全面移行を見据えていた。日本ユニシスに対して「稼働から5年が経過したらシステム基盤を更改したいが、クラウドでないとやらないと伝えていた」(新谷部長)。

 BankVisionのクラウド移行に向けては、当時専務だった杖村頭取らが米シアトル近郊にあるマイクロソフト本社に毎年出向いて本社の幹部に直談判し、協力を取り付けていた。

 一例が、Azureの仮想マシンが稼働する物理サーバーをユーザーが占有できるサービス「Azure Dedicated Host」に関してのものだ。米国で先行してサービス提供を始めていたが、日本での投入が予定よりも少し遅れていたという。

 杖村頭取らは米本社の幹部に「それがないと本稼働できない」と伝え、北国銀行のプロジェクトに間に合わせてもらった。新谷部長は「米本社との交渉で不安材料を払拭できた。これが、プロジェクトが成功した最大の要因だった」と振り返る。

 時にベンダーに毅然とした態度で要求を伝えてきた杖村頭取だが、「我々はシステム開発を手掛ける皆さんを業者とは思っていない。互いのビジネスを発展させていくパートナーだと思っている」と話す。実際に北国銀行は日本ユニシスをはじめとしたシステム開発会社を「ITベンダー」とは呼ばず、「ITパートナー」と呼んでいる。