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 住民と行政の「接点」である申請手続き。新型コロナ禍で非接触・非対面がニューノーマル(新常態)となったことで、地方自治体は「行かない・書かない・待たない」役所に向け、行政手続きのオンライン化を急ぐ。このニーズを奪うべく、ベンチャー企業や地方ベンダーが続々と自治体ビジネスに参入している。

 日経クロステックは2021年9月から12月にかけて行政ビジネスを手掛けるベンダーを対象にアンケートとインタビューを実施した。今回はオンライン申請サービスを手掛けるグラファー、トラストバンク、TRUSTDOCK(トラストドック)、TKCの4社について動向を見ていく。

1年間で利用団体は10倍以上に

 行政デジタル化を支援するグラファーはオンライン申請や役所窓口の事前予約などを支援するクラウドサービス「Graffer Platform」を提供する。同サービスの採用数は2020年3月末時点で6団体だったが、2021年11月時点で85団体と1年8カ月で約14倍に急増した。横浜市や名古屋市、札幌市といった政令指定都市も導入し、比較的規模の大きな自治体を中心に採用数を伸ばしているという。

各社のオンライン申請サービスと採用状況
(アンケートとインタビューの結果を基に日経クロステック作成)
企業サービス利用団体数
TKCスマート申請システム10以上(2021年9月末時点)
かんたん窓口システム20以上(2021年9月末時点)
グラファーGraffer Platform85(2021年11月時点)
トラストバンクLoGoフォーム380(2021年11月時点)

 Graffer Platformで提供するオンライン申請サービスの「Graffer スマート申請」は給付金や補助金の申請、転出の手続きの申請などの場面で使う。通常、公的手続きなどでは本人確認のため住民が役所に出向く必要がある。電子申請を使えばマイナンバーカードで本人確認するため、当然ながら役所に出向く必要はない。

 電子申請の流れはシンプルだ。利用する住民は名前や住所、申請内容などをオンラインフォームに入力し、スマホにマイナンバーカードをかざして本人確認をしたうえで申請する。クレジットカード決済に対応しているため、証明書発行などの手数料の支払いもオンラインで完結する。

  Graffer Platformを採用する自治体は今後増える可能性がある。Graffer Platformが2021年12月20日に「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP、イスマップ)」に登録されたからだ。ISMAPとは、政府が調達する民間企業のクラウドサービスについて、セキュリティーを担保しながら円滑に導入できるようにするための登録制度である。ISMAP登録を調達要件とする自治体もあるため、今回の登録は追い風になる。

 トラストバンクが自治体向けに提供するWebフォームの作成支援サービス「LoGoフォーム」も行政手続きのオンライン化に役立つサービスだ。現在、380団体(2021年11月時点)が利用する。行政専用のネットワークである「LGWAN」とインターネットの両方で使え、自治体職員がWebフォームを簡単に作成できるのが特徴だ。

基幹システムとの連携強化へ

 グラファーやトラストバンクといったベンチャー企業が攻め入る一方、これまで自治体システムを構築運用してきたTKCもオンライン申請サービスの強化に乗り出している。組織面では2021年11月に、地方公共団体事業部に「自治体DX推進本部」を新設した。

 同社は現在、オンライン申請に関連するサービスとして「スマート申請システム」と「かんたん窓口システム」を提供している。前者はオンライン認証やオンライン決済、通知書類のオンライン交付など、行政手続きの一連のプロセスをデジタル化するサービスで、10団体以上(2021年9月末時点)が採用している。同サービスを導入すると、オンライン申請できるようになり、来庁予約にも使える。