全国約1700の地方自治体は2025年度末までに標準準拠の自治体システムに原則移行する。システム移行に際しては、業務フローの見直しや業務改革(BPR)を断行する必要もある。
自治体システム標準化や行政DX(デジタルトランスフォーメーション)によって生じた新たな市場に食い込むIT企業3社のサービスと戦略を見ていく。
自治体向けビジネスチャットでシェア4割超
自治体でもテレワークが進むなか、自治体の職員同士がDXやシステム標準化などに関する情報をやり取りし、共有するニーズをいち早く刈り取っているのが、ふるさと納税仲介サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクだ。同社が提供する自治体向けのビジネスチャット「LoGoチャット」は、サービス開始から2年で全自治体の約4割以上に当たる811自治体(2021年11月時点)が使うまでシェアを広げた。
LoGoチャットの特徴は2つある。1つは、国や自治体間を結ぶ閉域網「LGWAN(総合行政ネットワーク)」とインターネットの両方で使える点である。
コロナ禍で採用数を伸ばした大きな要因となった。「出勤が制限されたり密な状態で仕事ができなかったりするなか、コミュニケーションをどう保つかが自治体にとって喫緊の課題だった」(木沢真澄取締役パブリテック事業部長)。
もう1つが、他の自治体職員とも情報を交換できるオープンなコミュニティー「LoGoチャットユーザーグループ」の存在だ。全国8000人以上の自治体職員が同グループに参加している。
どんなグループがあるのか。トラストバンクによれば、ふるさと納税や自治体DX、情報セキュリティー対策、窓口業務などがあるという。自治体職員は気になるトピックのグループに参加し、課題を共有したり情報収集したりできるわけだ。 直近では、自治体DXやマイナンバーに関する話題が盛り上がっているという。
自治体の内製化ニーズをノーコードで満たす
自治体がBPRに向けローコード/ノーコード開発ツールを活用し、内製化を進める動きもある。食い込むのがサイボウズだ。
ローコード/ノーコード開発基盤クラウドサービス「kintone(キントーン)」を提供する同社は2021年3月から自治体への提案活動の強化などを目的に営業戦略部に「公共専属グループ」を新設した。同部署は同社社員だけでなく自治体からの出向者も在籍する点が特徴だ。
現在、138自治体が同サービスを利用する。2019年から2021年までの3年間で利用自治体数は約4倍に伸びた。