自動車部品で世界最大手のドイツBosch(ボッシュ)が、半導体の内製に力を注いでいる。ドイツ・ドレスデンに半導体の新工場を開設し、2021年7月に稼働した(図1)。クルマが“電子部品の塊”になる中で、デジタルツインやAI(人工知能)などを全面導入した新工場で競争力を高めていく。
Bosch新拠点のVR工場見学へ ドレスデンに開設した半導体工場の内部に潜入!「130年以上にわたる当社の歴史で、単一の投資としては今回が最大だ」。こう語るのは、Bosch取締役会会長のVolkmar Denner(フォルクマル・デナー)氏である。ドレスデンの新工場への投資額は10億ユーロ(約1300億円)に上る。
新工場は口径300mm(12インチ)のウエハー製造ラインを備え、自動車用の特定用途向けIC(ASIC)や電動工具向けのパワー半導体などを生産する(図2)。クリーンルームの面積は既存工場の2倍と広い。
ドイツ電気電子工業連盟(ZVEI)によると、1台の新車に占める半導体の価格は1998年の120ユーロから2018年に500ユーロに増え、23年には600ユーロを超える見通しである。自動運転や電気自動車(EV)の普及が加速すれば、その金額はさらに増える。
こうした電子化の潮流に対応するため、10億ユーロもの資金を投じて開設した新工場。Denner氏は、「ドレスデンではAIを駆使し、半導体の製造を新しいレベルへと引き上げる。自動的に最適化されるデータドリブン型の工場となる」と胸を張る。
3年かけてデジタルツインを実現
新工場のキーワードとなるのが、デジタルツインと「AIoT」の2つだ。
前者のデジタルツインについて、ドレスデンの拠点を統括するChristian Koitzsch(クリスティアン・コイッチュ)氏(President, Robert Bosch Semiconductor Manufacturing Dresden)は「工場のすべての要素と工場に関連する建設データをデジタルで記録し、3Dモデルで視覚化した」と説明する(図3)。
3Dオブジェクトの数は全部で約50万個と多く、工場の建設と並行して約3年をかけて用意してきた。具体的には、建物とインフラ、供給および廃棄システム、製造システム、パイプ、ケーブルダクト、換気システムなどを可視化できるようにした。