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 ガス販売大手の日本瓦斯(ニチガス)が、新たなビジネスモデル「LPG(ガス)託送」の構築に注力している。武器となるのがデジタルツイン技術だ(図1)。充填基地での製造から一般家庭での消費まで、LPガスタンクの物流網を仮想空間に再現。自社配送の効率化だけでなく、供給プラットフォームを競合他社にも貸し出す事業で成長を図る。

図1 デジタルツイン技術を導入したLPガスの充填基地
図1 デジタルツイン技術を導入したLPガスの充填基地
ガスボンベに貼ったバーコードをカメラで読み取り、これまで作業員が行っていたボンベの管理作業を自動化した。(写真:ニチガス)
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 LPガス事業者は、全国に約1万8000社ある。電力会社が10 社で、都市ガス会社でも約200社だ。LPガス事業者はケタ違いに多いうえ、地域ごとに営業地域が分かれていない。ニチガス専務執行役員でエネルギー事業本部長の吉田恵一氏は、「事業者が入り乱れており非効率で、物流コストに跳ね返っている。カーボンニュートラルを実現していくためにも、LPG託送の仕組みが必要だ」と訴える。

 LPガス事業にかかる費用のうち、物流コストは3分の1を占める。無駄の多い供給プロセスをIoTやAIを使って見直し、他社にも開放するのがニチガスのLPG託送構想だ。

 同社の試算では、「業界全体のコストと二酸化炭素(CO2)を半減できる」(吉田氏)という。実現に向けて鍵を握るのが、「スペース蛍」と「夢の絆・川崎」だ。一風変わった名前の2つの取り組みが、ニチガスのDX(デジタルトランスフォーメーション)を引っ張る。

夢の絆の能力が過剰なワケ

 スペース蛍はニチガスが開発したIoT機器で、一般家庭など客先に設置したガスメーターとつないで使う(図2)。メーターの検針データを1時間に1度の頻度で取得する。そして、1日に1回、24時間分のデータをデータ収集基盤へ送信する。

図2 ニチガスが開発した「スペース蛍」
図2 ニチガスが開発した「スペース蛍」
ガスメーターと接続することでガス使用量を自動計測し、ニチガスのデータ基盤にオンラインで連携できるようにした。(撮影:日経クロステック)
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 これまでガスメーターのデータは、担当者が検針で世帯を訪問する月1回の頻度でしか取得できなかった。スペース蛍を使えば、1時間単位できめ細かく自動的にメーターの情報を取得できる。

 データ活用先の1つが、ガスボンベの交換頻度の削減である。ニチガスは顧客1世帯当たり2本のガスボンベを設置している。これまでは月1回、検針員が客先に訪問したときにしかガスボンベの残量をつかめないことから、2本のうち満タンの1本はバックアップ用とみなしたうえで、空になった残る1本を交換していた。つまり1回の交換で1本しか交換できないので、こまめに交換する必要があった。

 スペース蛍で毎日検針データを把握できるようになれば「いつ2本とも使い切るか」が分かるので、タイミングよく2本まとめて交換できるようになる。こうなれば1世帯当たりの交換頻度を減らせるわけだ。無駄な配送を減らすことで、年間で数億円のコスト低減が期待できる。