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 「先端テクノロジーは民主主義の発展に重要な役割を果たす」――台湾のデジタル大臣であるオードリー・タン氏は、2021年10月12日、オンラインで開催されている「日経クロステック EXPO 2021」に登壇し、こう強調した。

 講演テーマは「台湾のデジタル民主主義と社会イノベーション」。台湾は2016年に発表した「デジタル国家・イノベーション経済発展計画(DIGI+2025)」の取り組みを進めている。デジタル技術を活用してより良い社会を目指すデジタル民主主義の取り組みについて、台湾での事例や目指す姿を紹介した。

「デジタル民主主義には信頼関係が欠かせない」と語るオードリー・タン氏
「デジタル民主主義には信頼関係が欠かせない」と語るオードリー・タン氏
(撮影:日経クロステック)
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 タン氏は「デジタル民主主義と聞くと、古代ギリシャに起源する民主主義と、未来をイメージさせるデジタルという言葉の間に不協和を感じるかもしれない」としながらも、「私は、民主主義はある種のソーシャルテクノロジーであると捉える」と語る。同氏にとって民主主義とは「時間の経過とともに進化し、人々の努力によって改善していく」ものであるという。

 デジタル民主主義によって「開放性と透明性を促進させ、民主主義のビットレートを上げる。誰もが参加できて十分なコンセンサスが得られるようになる」(タン氏)。しかし同時に、透明性には別の側面があると指摘する。「デジタル権威主義の下では、政府が市民に対して透明性を強いることになる。政府が所有するデジタルツールを用いて市民を監視するかもしれない」(同)との懸念を示した。

 そうした先端テクノロジーの持つ二面性の中で、台湾のデジタル民主主義が基盤としているのは「相互信頼」であるという。台湾では、改革的な政策の実現を目指し、誰もが新しいアイデアを提案できるようなデジタルインフラを構築している。その際、市民と政府が相互に提供し合う仕組みを用意することで信頼が生まれるという。「こちらが信頼しないと相手も信頼してくれない。政府への信頼を高めるには、私たち政府が市民を信頼する必要がある」(タン氏)。

 「総統杯ハッカソン」はそうした取り組みの一例だ。データを活用した社会課題の解決を目指す取り組みで受賞チームが提案したシステムは政府の政策として推進され、チームメンバーは政策に関わっていくことができる。

 個人情報などの取り扱いに際しては、透明性を確保する仕組み作りをしているという。「データ管理者とデータ作成者が共同でガバナンスシステムを構築することで、人々からの信頼を得られる」と説明した。

 これらの仕組みを生かして作られた個人情報が関連するサービスの数は100件を超えている。オープンAPIを使ったアプリケーションは約200個、窓口サービスも64件あるという。