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アフターデジタルでは産業構造も変化、頂点は決済プラットフォーマーに

 競争原理の焦点が製品から体験へ移ると産業のヒエラルキーも変わる。従来は製品やサービスを作って流通させるメーカーがヒエラルキーの上位に立っていたが、これからはユーザーの行動データを大量に持っているところが産業ヒエラルキーの上位に来る。例えば、いわゆるGAFA(米国の大手IT企業、グーグル(Google)、アマゾン(Amazon.com)、フェイスブック(Facebook)、アップル(Apple))が上位にいるのはそれが理由であるし、現在の中国ではアリババグループ(阿里巴巴集団)やテンセント(騰訊控股)といった決済プラットフォーマーが産業ヒエラルキーのトップに君臨すると藤井氏は説明する。

 「日本ではこんな変革は起きないとよく言われるのですが、結構そんなことはないんじゃないかと思う」と藤井氏は続ける。QRコード決済サービスの「PayPay」が100億円キャッシュバック・キャンペーンを実施したのも、ヤフーとLINEが統合したのも、トヨタ自動車が「移動のプラットフォーマーになる」と宣言して決済サービス「TOYOTA Wallet」を始めたのも、すべて産業ヒエラルキーの最上位レイヤーを取るためだと藤井氏はみる。つまり日本もまた中国と同じ方向へと向かっているのだ。

 一方で「何のためのDXか」という視点の欠落が、日本の問題点だと藤井氏は指摘する。アフターデジタルの大きな時代の転換により、製造販売型のビジネスが立ちゆかなくなり、体験提供型へのシフトが迫られている。DXの目的はデジタル化自体やDXそのものではなく、顧客と新たな関係を結ぶUXの提供にあると藤井氏は断言する。顧客接点ごとに連続したUXを提供する「バリュージャーニー」を新たに構築し、得た顧客の行動データから、顧客接点それぞれのUXを改良して企業や製品、サービスのファンを作っていくことにDXの目的があると藤井氏は説く。

 広く集客し、購入やサービスへの契約をゴールとする従来の製品販売型ビジネスの構造はファネル(漏斗)形の図形で表される。体験提供型ビジネスにおいてはこのファネルは新規顧客の獲得のために必要ではあるものの、ビジネス全体から見ればほんの一部でしかない。アフターデジタルの構造図では、製品を購入したユーザーに無料・廉価な体験(UX)を提供し、そこで得た良質な行動データでUXをよりよく改善するループを構築。さらにそこからマネタイズ可能な有料サービスのループへと誘うものになる。