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自治体に眠るデータを活用して新たな価値を生み出す

 都市の3Dモデルを一からつくるには莫大な費用がかかりそうだが、プラトーでは市町村が既に持っている2次元の「都市計画基本図」や、基本図の作成時に実施する航空測量の3次元データなどを活用してコストを抑えている。

 都市計画基本図とは、自治体が都市計画やインフラ管理に利用するために定期的に作成する2次元のデジタル地形図だ。「基本図を作成するため、市町村は3~5年、大都市は毎年、航空写真やLP(レーザープロファイラー)で都市を測量している」(内山課長補佐)

 2次元の基本図に、高さ方向の測量データを付与すれば、建物などを3次元化できる。さらにモデリングしたオブジェクトには、5年に1回程度の頻度で自治体が実施している「都市計画基礎調査情報」のデータを与えた。個別の建物の用途、構造、建築年などを含む膨大で詳細な情報だ。こうした意味情報(セマンティクス情報)を3Dモデルに付加したうえで、オープンデータとして流通させているのだ。

「Project PLATEAU」の特徴。活用されていない既存のデータを発掘し、オープンデータとして流通させた(資料:日経クロステック)
「Project PLATEAU」の特徴。活用されていない既存のデータを発掘し、オープンデータとして流通させた(資料:日経クロステック)
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 このためプラトーを用いると、街にある全ての建物の屋根から太陽光発電設備を置ける屋根だけを抽出する、といった分析が簡単にできる。「都市計画基本図や都市計画基礎調査情報など、現実の都市空間に限りなく近いリッチなデータをオープンにすることで、今までになかったようなサービスやソリューションを創出できる可能性がある。いわゆるデジタルツインの基盤データになり得る」と内山課長補佐は力を込める。

 2020年度には、公募で選定した56都市(面積約1万km2)について、モデルの整備を終えた。「自治体への支援策などを用意し、今後もさらに整備を進めていきたい」(内山課長補佐)