「変化に対応するものだけが生き残る」
では、日本でカーボンニュートラルを進めるにはどうすればよいのか。自動車部品メーカーや化学素材などの製造現場と仕事をしている鍋野氏は、「まずは省エネルギー対策をしっかりやること」と指摘する。「私自身も製造現場と一緒に取り組んでいるが、日々、悪戦苦闘している」(同氏)。工場ならどこも取り組んでいるはずの省エネですら、徹底して行うのは簡単ではない。
同氏は、最初のステップとして「CO2排出量レポートを自動作成する仕組みを整え、CO2排出量を見える化する。それで自分たちの立ち位置をはっきりとさせ、全社員を対象とした意識改革に取り組んでいくのが大事」であると語った。
カーボンニュートラルへの適応は「『変化に対応するものが生き残る』というダーウィニズム(進化論)*」――。こう語ったのは幸坂氏だ。「今後は、CO2を基準として取引先、購入品が選択される時代がやってくる。この変化はビジネスチャンスになり得ると考えて取り組むべきだ」と同氏は言う。
福本氏は、「従来のルール、商習慣、業務プロセス、設計製造などを見直さないとパラダイムシフトは実現できない。個々の企業だけでなく、国・地方自治体、市民、産業界全体が協働して取り組まなくてはならない」と、地域や国が一体となって取り組む重要性を指摘した。
その協働は誰が主導していくのか。その問いに対して福本氏は、「欧米の場合は国のトップが担うが、日本は必ずしもそれが正解とは限らない。トップが主導しつつ、(具体的な)技術についてボトムアップで取り組み、それをうまく融合しながら進めるのが大切ではないか」と答えた。