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 2021年10月14日、「日経クロステック EXPO 2021」のパネルディスカッション「製造業はDXで何を変えるべきか -カーボンニュートラル時代の生き残り戦略-」では、日本におけるカーボンニュートラルと製造業DXの役割について、それぞれ異なる立場でDXに携わる3人が議論した。

 登壇したのは、東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンターのチーフエバンジェリストである福本勲氏、フロンティアワン 代表取締役の鍋野敬一郎氏、電通国際情報サービス(iSiD) 執行役員 X(クロス)イノベーション本部長 幸坂知樹氏。モデレーターは「日経ものづくり」編集長の吉田勝が務めた。

パネルディスカッションの登壇者
パネルディスカッションの登壇者
右から電通国際情報サービスの幸坂知樹氏、フロンティアワンの鍋野敬一郎氏、東芝の福本勲氏。左端はモデレーターの吉田勝。(出所:日経クロステック)
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デジタルなしでは脱炭素のデータ収集ならず

 2020年秋の菅前首相の宣言により、製造業においても“待ったなし”ともいえるカーボンニュートラルへ。デジタルトランスフォーメーション(DX)で何ができるだろうか。

 幸坂氏は、カーボンニュートラルに向けた企業の取り組みは、大きく「CO2排出量コントロール」と「競争優位性の構築および新規事業創出」にあるとした上で、「自社だけでなくサプライヤーまで含めたCO2コントロールや、製品の電動化などに取り組む必要がある」と語った。そのためには、CO2排出量の情報も基幹システムでの管理対象にすべきで、「例えば、企業グループ全体でのカーボンフットプリントの数値(CO2e)把握や、国および自治体単位での規制対応・報告を支援する仕組みを整備しなくてはならない」(同氏)。その実現にはデジタル技術が不可欠であり、「カーボンニュートラルは、DXやスマートファクトリー化を進める素晴らしいチャンス」(同氏)なのだ。

カーボンニュートラルに向けた取り組み
カーボンニュートラルに向けた取り組み
(出所:資料は幸坂氏、写真は日経クロステック)
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 鍋野氏は、現場レベルの観点からDXの重要性について語った。「目に見えないCO2の見える化は実は難しい。電力の購買情報を集めるだけでは分からない」(同氏)。工場の各工程で使う電力が非化石燃料由来かどうかは購買情報では証明できず、生産プロセスを細分化して証明していかなくてはならないからだ。毎月の生産数や設備稼働率を収集し、分かりやすく見える化した上で、製品1個当たりのCO2排出量を算出する必要があるが、「相当大変な作業で、Excelに数値を手入力するようなやり方では到底無理」(同氏)。そこで、必要なのがDXやスマートファクトリーというわけだ。現場の作業進捗などやエネルギー消費量のデータを自動収集する仕組みを整えることで、再生可能エネルギーの利用やカーボンニュートラルへの取り組みも大きく進展するとみている。

上位システムと現場のデータの連係
上位システムと現場のデータの連係
ERPやMESのデータで現場のデータを連係させて生産工程におけるCO2排出量を細かく把握する。(出所:資料は鍋野氏、写真は日経クロステック)
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 福本氏は、エネルギーの利用側および供給側の視点から、カーボンニュートラルの課題について語った。発電量が変動する再生可能エネルギーを利用しつつ電力需給のバランスを保つ手段としては、「VPP(バーチャルパワープラント:仮想発電所)」というデジタル技術が有効だと福本氏は言う。

 加えて工場が、CO2排出量を最適化するためには、「設備の稼働管理や保守管理に加え、気象予測情報や生産計画に基づく水・電力などの使用量予測、空調などの動力設備の状況などを多面的にモニタリングし、エネルギーを安定供給しつつ、生産計画に応じた最適化を行うことが必要」(同氏)。その実現にはデジタル化が欠かせないのだ。