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 鹿島の「クワッドアクセル(A4CSEL)」は、建設機械の自律稼働を担う次世代建設生産システムだ。「日経クロステックEXPO 2021」では、同社の専務執行役員で土木管理本部副本部長を務める高田悦久氏を迎え、日経クロステックの浅野祐一建設編集長がその現状と展望などを聞いた。

 「鹿島は今、世界のつくり方をつくっている」

 こんなナレーションとともに始まる「クワッドアクセル」のコンセプト動画を紹介するところから対談は始まった。

 動画ではブルドーザーをはじめとする重機が、工事現場で自律的に作業をこなしていく様子を紹介。労働人口の減少を迎えるなかで、「インフラを自動運転でつくる」というクワッドアクセルのコンセプトを明快にアピールした。

鹿島がクワッドアクセルを紹介するために制作した動画の一部(資料:鹿島)
鹿島がクワッドアクセルを紹介するために制作した動画の一部(資料:鹿島)
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 現在建設中の成瀬ダム(秋田県東成瀬村)において、このシステムが稼働している様子だけでなく、遠隔操作と自動制御の協調によって宇宙にインフラをつくろうとする宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究も紹介。AI(人工知能)やIoT、ロボットといった異なる専門分野の人材が結集して、土木の未来を変えていこうとする今後のビジョンにも言及した。

 ビデオが終わると、高田氏は最大23台の重機を自律運転させて施工する予定の成瀬ダムの工事を解説した。自動化率は最大90%まで高められるという。浅野編集長は動き回る重機の種類が異なる点を指摘。クワッドアクセルの革新的な部分は、役割の違う機械が連係して作業を進められる点にもあると述べた。

 単体の重機を自動化、自律化させるのではなく、多数かつ複数種の重機を一元的に管理して大型の土木構造物を構築する事例は、成瀬ダムが国内初だ。しかも補助的な工事に用いているのではなく、CSGで構築する堤体打設というメインの作業を自動化した点が画期的だ。「こういう現場は世界にもない」と高田氏は胸を張る。

 鉱山などで土砂の運搬が自動化された例はある。だが、成瀬ダムでは施工作業が自動化されており、作業の複雑さが違う。現場の状況は日々変化していくし、機械の故障といったトラブルなども考えられる。クワッドアクセルでは、複数で運用する機械の1つが故障しても、別の機械で対応させられるような取り組みも取り入れつつあるという。

 ここで浅野編集長が、リモート化のフィールドにダムを選択した理由を尋ねた。高田氏は、ダムは昔からなるべく汎用の機械を使って合理化を図ってきた土壌があることに加え、堤体打設は同じ作業を繰り返して構造物を構築するという作業の特質に触れた。

 そして高田氏は、「ダム技術者には新しいことへの挑戦と技術の追求をしてきた人が多い」と語り、こう続けた。「そういう人間が集まったからこそ、諦めずにこの10年間、様々なダム現場で(クワッドアクセルの)開発を続けてこられた」

鹿島の高田悦久専務執行役員(右)と日経クロステックの浅野祐一建設編集長(資料:日経BP)
鹿島の高田悦久専務執行役員(右)と日経クロステックの浅野祐一建設編集長(資料:日経BP)
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