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 日経クロステック EXPO 2021の4日目の2021年10月14日には、aba(アバ、千葉県船橋市)代表取締役 宇井吉美氏が「介護ロボットで未来を支える」と題した講演を行った。abaは千葉工業大学で介護ロボットの研究開発をしていたメンバーで創業したスタートアップで、介護現場の課題を技術で解決する「ケアテック」分野の注目企業だ。2021年10月7日に発売した『日経テクノロジー展望2022 世界を変える100の技術』(日経BP)の出版記念講演として招いた。

「誰もが介護できる仕組みが重要」と語るaba代表取締役の宇井吉美氏
「誰もが介護できる仕組みが重要」と語るaba代表取締役の宇井吉美氏
同社は千葉工業大学で介護ロボットの研究開発をしていたメンバーで創業したスタートアップだ。(撮影:日経クロステック)
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未経験者が支える介護現場を肌で知るから「誰でも介護」を目指す

 abaは「テクノロジーで誰もが介護できる社会を作る」をスローガンに掲げる。宇井氏はabaを起業した当初3年間、介護業界を肌で知るために、開発者、社長業と並行して土日だけ実際に介護職として働いていた経験の持ち主。そんな経験も踏まえて大きな課題と認識しているのが、介護現場を支える多くの人が「介護未経験者」であるという現状だ。

 医師や看護師は学校で勉強して専門性を身に付けてから現場に出る。だが、現場を支える介護職員の多くは未経験で職に就き、専門的に学ぶ時間もなく現場に立って仕事をしている。こうした状況もあり、介護施設を退職する職員の7割が3年以内の離職と言われるほど、介護業界は人の出入りが激しく、慢性的な人手不足に陥っている。これだけのスピードで人が辞めていくと、介護施設は十分な人手の担保ができなくなる。結果として、部屋やベッドは空いているのに高齢者を預かれないという残念な状況につながる。

 また施設に簡単に入所できないため、年間約10万人が自分の仕事を辞めて在宅介護をしている。この人たちも介護未経験者だ。仕事を辞めないまでも、実は家で介護している、週末実家に帰って親の介護を手伝っている、そんな「隠れ家族介護者」は約1300万人、国民の10人に1人も存在するというデータもあるという。

 この大きな課題を解決する1つの方策は「誰でも介護ができる仕組みを作ること」だと宇井氏は話す。それが会社のスローガンになっている。

最も大変な「排せつケア」をテクノロジーで解決

 abaが現在手掛ける「Helppad(ヘルプパッド)」は、においセンサーを利用して体に負担を掛けずに排せつを自動検知する機器。パラマウントベッドと共同で製品化した。ベッドに敷くシート状のにおいセンサーで尿や便の臭気を検知。本人がナースコールしなくても、看護師や介護職員が排せつにリモートで気づける。