e-POWERとFRの組み合わせは?
日産自動車について桃田氏は「『NISSAN NEXT』という事業再生のまっただ中にあり、日産の本当の『ネクスト』を見たかった」と語る。
岡崎氏は「日産はやっと最悪期から脱出したように見える。どう攻めに転じるのか。日産の安全システムは自動運転を含めてどんなロードマップになるのか。他メーカーに対して日産が優れているところを強くアピールしないと『日産ちょっと元気ないね』というイメージを覆せない」と話した。
鶴原氏は「日産のエンジン車は今後シリーズHEVのe-POWERになっていく。e-POWERとFR(前部エンジン・後輪駆動)系のプラットフォーム、それから高級スポーツセダン、これらをどう組み合わせるのか、今回のモーターショーで見たかった」と話す。
ホンダは40年までに先進国におけるエンジン車を廃止すると発表して話題になった。岡崎氏は「40年にEVと燃料電池車(FCV)に移行するのであれば、今は最後のエンジンを仕込む時期になる。意地ですごいエンジンを見せてほしかった」と話した。
桃田氏は「消費者も、売っている側も『ホンダって何?』というのが分からなくなってきている」と指摘し、「ホンダってこんな会社だよと、なにか心に刺さることをしてほしい」と続けた。
岡崎氏は「(ホンダの)三部敏宏社長はこれまでエンジン車やレジェンド、NSXなど、やめるとばかり言っている。それも重要だが『何をやるか』を聞きたいし、見たい」と話した。
新型の直列6気筒エンジンを開発中のマツダに対して、岡崎氏は「縦置き6気筒FRベースのCX-5後継車両を見せていれば、東京モーターショーの華の1つになった可能性は高い」と語る。桃田氏は「ぜひ『電動化ロードスター』を展示してほしかった」と続けた。
環境重視の時代に直列6気筒エンジンの車を出す意義について岡崎氏は次のように話す。
「世の中の車のほとんどがEVに切り替わるのがいつかは分からない。ただ20年後ではないと思う。おそらく30年後、40年後まで、一部の先進国は別としてエンジンは非常に重要なパーツになる。エンジン開発をやめてしまったメーカーと、頑張ってエンジンを開発しているメーカーでは、20年後に大きな差がつく。欧州自動車メーカーはエンジン開発のリソースをどんどん削っている。20年後には日本車が強くなっている可能性もある。私の考えでは、そうやすやすと世界でEV化は進まないので、エンジン開発はまだやるべきだ。『今さらエンジン』ではなく、今やった方がいいと考える立場なので、すごくいいことだと思う」。
鶴原氏の「マツダのEVを見てみたい」という問いかけに対し、岡崎氏は「(トヨタ・マツダ・デンソーのEV共同開発会社)EV C.A. Spiritの知見を使ってくるのではないか」と話し、「目に見えない部分での共通化でコストダウンを図ってくるとしたら、マツダのEVも結構競争力があるのではないか」と期待した。
「三菱自のPHEVは世界一」
SUBARU(スバル)については鶴原氏の「独自性を打ち出してきたメーカーなので、トヨタとEVプラットフォームを共通化して個性を打ち出せるのか」という問いかけに対し、岡崎氏は次のように答えた。
「ドイツPorsche(ポルシェ)はRR(後部エンジン・後輪駆動)、水平対向6気筒エンジンの『911』が伝統的にあり、『ボクスター』や『ケイマン』は水平対向4気筒をミッドシップで積んでいる。一方でSUV系にはドイツVolswagen(フォルクスワーゲン)のエンジンを搭載するが、それでも乗るとポルシェらしくなっている。それができればスバルの個性を打ち出せるのではないか」(岡崎氏)。
三菱自動車について岡崎氏は「プラグインハイブリッド車(PHEV)でいくしかない」と語る。鶴原氏の「日産とプラットフォームを共通化しており、果たして三菱自動車の個性は残るのか」という問いに対し、桃田氏は「PHEVで個性を打ち出せると思う」と語った。
「三菱自動車のPHEVは、仕上がりもコスパも電池を使い切ったときの燃費も世界一だと思う。次期エクストレイル(日産)とプラットフォームを同じにしているが、四輪駆動のエンジニアが丹精込めて作り上げているので、多分乗ったら全然違う車になっていると思う」(岡崎氏)。
東京モーターショーはどうあるべきか
そもそもモーターショー自体が地盤沈下しているとも言われる。今後の東京モーターショーはどうあるべきか。桃田氏は「専門店型だ」と語った。
「今まではスーパーマーケット型だった。今後はオートサロンのようなもの、技術的なものなどに分かれていく。1つの展示会で全部をやるのは難しい。販売店と協力した実売会みたいのものも含めて、お客さんに近い形で専門化しないと、なかなか成り立たない気がする」(桃田氏)。
岡崎氏はこう話す。「徹底的にドメスティックなショーにするのか、もっと国際化を進めて海外に日本の技術や文化を発信するショーにするのか、そこから議論を始めないとコンセプトが決まらない。私は国内ユーザー向けの販売促進としてのモーターショーは、それぞれのメーカーが体験型施設を作ればいいと思っているので、モーターショーは海外に日本の技術や車文化を発信するものに特化したほうがいい」。