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 問題点として登氏が挙げるのは「ゼロリスク」だ。登氏は「ゼロリスク」と「カオス」と書いた吹き出しを左右に置き、その間に矢印を引いた図を見せながら解説する。「カオスになると破綻するからゼロリスクだと言う。だが他社が面白いことをやっていると、ゼロリスクでは何も生み出せずやはり破綻する。両者の真ん中あたりで絶妙なバランスを取ることが重要だ」(登氏)。

NTT東日本ビジネス開発本部特殊局の登大遊氏
NTT東日本ビジネス開発本部特殊局の登大遊氏
登氏は「ゼロリスク」と「カオス」の中間が大事だという。(出所:日経クロステック、配信動画をキャプチャー)
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アップルもグーグルも「いんちき」な手法から始まった

 登氏がこれからの日本に必要なのは「いんちき」な開発手法を認め、どんどんやらせることだと言う。

 実は、今世界で通用する製品やソフトウエアも、当初は「けしからん」と叱られるようないたずらや遊びから発展していったものだという。登氏は、米アップルの創業者が電話のタダがけ装置を作っていたことや、米AT&Tの技術者が仕事中に遊ぶゲームを移植するためにUNIXやC言語を作り出したエピソードを紹介。「業務時間中に遊んでいてはいけないとなると、まだUNIXもC言語も存在していない」(登氏)。

 今をときめくクラウドの技術も「いんちき」から出発している。例えば、米グーグルの創業期は、米インテルから無料でもらった「いんちき・サーバー」で検索エンジンを作っていたという。頻繁に壊れるサーバーを使いながら、ロードバランシングやフォールトトレランスを自分たちのソフトウエアの力で実現していた。これが後のイノベーションにつながったと登氏は分析する。

 日本でも、昔は大学や会社で雑多にパソコンが並んでいたスペースがあっただろう。「しかし最近は、セキュリティーポリシーやコンプライアンス順守が叫ばれ、大学や企業、役所からこうした面白い実験ができる環境がなくなってしまった。なのに目指す先はグーグルなどと言っている」(登氏)。「いんちき」を遠ざけてしまえばイノベーションなど起きはしない、登氏の目にはそう映っているのだ。

 そういう登氏自身も、「けしからん」と怒られるような環境の中で「いんちき」な手法を用いながら、数々のシステムやソフトウエアを作ってきたという。

 例えば、IPAの中でも「けしからん」サーバールームを運用している。配線もこんがらがっており、一見、雑多にサーバーが扱われているように見える。しかし登氏は、「きちんと秩序は保たれていて、現在でも20Gbps程度の信号を処理して重要なシステムが動いている」。