企業や自治体が5G(第5世代移動通信システム)を活用する上での勘所は「共感力」「コスパではなく付加価値」「いますぐ取り組む」の3点だ――。ON BOARD代表取締役の大山りか氏と企代表取締役のクロサカタツヤ氏は2021年10月18日、オンラインで開催された「日経クロステック EXPO 2021」に登壇し、企業や自治体が5Gをビジネス活用する勘所についてこう語った。
パネルセッションの最初のテーマは「日本の5G活用は遅れているのか」というもの。デロイト トーマツ グループが2021年8月に発表した調査では、日本で5G 運用中と答えた企業は回答者の約半数にとどまり、日本経済新聞は「日本は出遅れている」と報じた。
『5Gでビジネスはどう変わるのか』(日経BP刊)の著者で、公正取引委員会にてデジタルスペシャルアドバイザーを務めるクロサカ氏は、「給与を減らしてでも雇用を維持すべきだ」と考える人が多いという日本生産性本部の調査を挙げ、「人を減らせば労働生産性は上がるが、これではデジタル投資が進まない。5Gにもブレークスルーが必要だ」と指摘する。
一方、NTTドコモやベンチャー企業を経て2021年2月にON BOARDを設立した大山氏は、業界や企業を超えた女性活性化施策「5G・IoTデザインガール」プロジェクトに取り組んできた。5Gに及び腰になる反応もある中で、「5Gが当たり前になる2030年を見越して新しい仕事をつくらないと、子どもたちの就職先がなくなる」という呼びかけが女性の心を動かしたという。
2つ目のテーマは「5Gの幻滅期は去ったのか」。ガートナージャパンが2020年に発表した「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル」では、5Gは「『過度な期待』のピーク期」だった。ガートナーによれば、このピークを過ぎた後に関心が薄れる「幻滅期」が訪れるという。
クロサカ氏は総務省の調査による「5G契約数」に注目。2020年3月末の5Gサービス開始後もコロナ禍で低迷していたが、2020年秋に5G対応の「iPhone 12」が発売されたことで普及に弾みがつき、コロナ禍ではデータ通信量も増加したことも相まって、今後は堅調に伸びていくとの見通しを示した。