Shiftall(シフトール)代表取締役CEOの岩佐琢磨氏は2021年10月14日、「『SNSの次に来るのはVRメタバース』ShiftallがVRに注力する理由」と題して、オンラインで開催中の「日経クロステック EXPO 2021」で講演した。
Shiftallはパナソニックの子会社で将来パナソニックが進出すべき新しい市場にいち早く参入し、実践的に調査、研究開発する役目を担っている。岩佐氏はShiftallのトップとして活動しながら、同時にパナソニックが進める数々の新規事業開発プロジェクトにも携わっている。その岩佐氏が今、最も注目しているのがVR(仮想現実)、そしてメタバース(Metaverse)の世界だ。講演で岩佐氏は、2021年になって急激に注目の度合いを増しているVRとメタバースとは、いったいどんなものなのかを分かりやすく解説した。
2021年に入って相次ぐメタバース関連投資
VRと聞いてほとんどの人が思い浮かべるのは、ゲームを中心としたエンターテインメント・コンテンツだろう。しかし、今話題となっているVRは「そうではない」と岩佐氏は講演の冒頭で指摘した。昨今、つまり2021年になってがぜん注目が集まっているメタバースとセットで語られるべきものなのだという。
岩佐氏は2021年に入ってからメタバースに関する発表が相次いでいる事実を紹介した。
まず、VTuber事務所「ホロライブプロダクション」を運営するカバーが2021年1月にメタバースへの参入を発表。続いて4月には米EPIC Games(エピック・ゲームス)がメタバースに10億ドル超を投資すると発表した。6月にはVR交流サービス(SNS)を運営する米VRChat(VRチャット)が8000万ドルの追加資金を調達し、7月には米Facebook(フェイスブック)がメタバースに推定50億ドルの投資を発表と、巨額の資金が動くニュースが連続した。8月になるとその流れはさらに加速し、米NVIDIA(エヌビディア)をはじめ、世界のあらゆる企業がメタバースに注目し、資本を投下していることが伝えられた。
こうしたメタバースへの参入にはFacebookやEPIC Games、NVIDIAなど世界のトップ企業が名を連ね、エイベックスをはじめとする国内企業の追随も見られる。このようにメタバースは日増しに話題性を増していると岩佐氏は指摘する。「ここで言うメタバースはそのままVRを意味するものではないが、最も注目を集めているのはVR世界に構築されたメタバースだ」(岩佐氏)。
話題にはなっているものの、参入各社が期待するようなメタバースを提供する本命サービスは「まだ世の中には存在してない」と岩佐氏は話す。それは「スマートフォンでチャットをしながらアバターを動かす」ものになるかもしれないし、岩佐氏が傾倒しているVRで構築されたSNSと周辺エコシステムの組み合わせになるかもしれない。「誰が覇権を握るのか、まだ分からない」(岩佐氏)状況にあるのだ。