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周辺のエコシステムを含めて社会を形成

 ここで言うメタバースを改めて定義すると、例えばアニメ「ソードアート・オンライン」や映画「レディ・プレイヤー1」といった物語で描かれているような「社会性を備えたVR体験」であると岩佐氏は説明する。参加者たちで構成された“社会”として機能している仮想空間の中の世界がメタバースである。

 メタバースの先駆けとみなされることが多いVRSNS「VRChat」にしても3Dアバターで参加できる点を除くと機能的にはSNSの延長線上に見える。しかし、そこにユーザーが集った結果、例えばVRChatで使えるアバターの3Dキャラクターモデルや、アバターが手にする道具などの3Dデータをユーザーが作り、それを販売してマネタイズするビジネスが既に成立している。つまりVRChatの中だけでなく、周辺のエコシステムを含めた「社会」が形成されているのが面白いポイントで、VRChatがメタバース化しつつあるとみなせる理由だと岩佐氏は語る。

 このVRChatの可能性を広く知らしめたのが、2021年3月に開催された「SXSW(South by Southwest:サウス・バイ・サウスウエスト)カンファレンス」だ。もともと映画や音楽といったエンターテインメントの祭典だったこのイベントは、米国テキサス州オースティンで開催され、年々規模を拡大してきた。

 しかし2020年は新型コロナウイルスの影響で開催を中止。ところが2021年は大胆にもVRChatを使ったVR空間での開催を含む完全オンラインイベントになって復活した。カンファレンスだけでなく、参加者が交流を深めるミートアップまでもがVRChatで行われ、その模様を世界各国のメディアが大きく報道した。

VRChat内で開催された2021年のSXSW(South by Southwest)カンファレンス
VRChat内で開催された2021年のSXSW(South by Southwest)カンファレンス
(出所:日経クロステック、配信動画をキャプチャー)
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高い没入感に秘められたメタバース実現の可能性

 メタバースは誰が覇権を握ることになるのか、いまだに不明であると先に語った岩佐氏だが、その一方で、VRに最も可能性を感じているという。なぜスマホやWebよりもVRに高い可能性があるのかと言えば、身体投射性を備えるVRならユーザーが高い没入感を得られるからだ。

 例えば手を顔の前に持っていけば、現実の肉体と同様にVR空間のアバターも顔の前に手を持っていく。現在のVRはアバターが自分の身体だと感じられるだけの情報の解像度とレスポンスを備えている。しかも、米Facebook TechnologiesのVRデバイス「Oculus Quest2」は4万円以下で購入できるという価格設定ながら、PCなどを必要とせずスタンドアロンで動作し、しかも高解像度のVR映像体験を可能にする。このOculus Quest2の存在も、VRメタバースが注目を集めることに大きく貢献していると岩佐氏は語る。