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「走れるけれども、実際は走らない場所」

 アイサイトの進化で齋藤氏が重視するのがAIである。「今、画像認識で最も重要といえるのがAIであり、我々の今後の開発においても大事である」と強調する。AIを使うということは「ディテクション(検知)から推論になるということだ」と同氏は解説する。

 例えば、次の図では道ばたの積雪している箇所は走行領域として認識されていない状態だ。実際は自動車で走ろうと思えば走れてしまうが、普通は危険性や交通ルールなどを考慮して走らない。それを従来のアルゴリズムに判定させるのは困難だ。また雪だけではなく、草地や砂利などの「走れるけれども、実際は走らない場所」は多く存在する。

道ばたでは積雪している道路(出所:SUBARU)
道ばたでは積雪している道路(出所:SUBARU)
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 齋藤氏は「人が走れるけれども走らない場所と判定できるのは、自分自身がこれまで目で見て体験してきた結果。AIにも同じことをさせればよい」と話す。AIで多くの走行パターンのデータを学習させることで、人と同様の判断ができるようになる。

 今後はAIを活用してクルマ、人、走行領域、道路標示、信号などを同時に認識する技術を開発していく。ただし自動車に搭載する半導体の演算能力や消費電力は限られている。限られた演算能力で多くのものを同時に認識するため、スバルはマルチタスクネットワークを開発しており、これを「SUBARU ASURA Net」と呼ぶこと明かした。

 最後にSUBARU Labでは、最先端のAI開発に挑むとともに、これからの自動車業界を担うAI人材育成のための環境整備に取り組んでいるという。自社ビルではなくシェアオフィスに入居し、リモートと実地のハイブリッド勤務など、新しい働き方を模索しているという。