産業技術総合研究所新原理コンピューティング研究センターの川畑史郎総括研究主幹は2021年10月19日、「量子コンピュータの国際競争激化、日本と世界の研究開発動向を読み解く」と題して、オンラインで開催中の「日経クロステックEXPO 2021」で講演した。量子コンピューターを構成する技術や、近年の国内外の研究開発動向について解説した。
「2017年から2021年の5年間は量子コンピューターにとって激動の年だった」。川畑氏は量子コンピューターの近年の研究開発動向についてこう語る。研究開発の急速な進展をけん引するのが超伝導量子コンピューターだという。アルミニウムなどの特定の金属や物質などを極限まで冷やすことで電気抵抗が0になる現象が超伝導だ。
超伝導量子ビットが誕生したのは1999年。茨城県つくば市にあったNECの筑波研究所で生まれた。それから2017年までの18年間で世界最高の超伝導量子コンピューターの集積度は9量子ビットまでにしか成長しなかった。しかし2017年から2018年までの1年間では、9量子ビットから72量子ビットまで急激に増えた。
米Google(グーグル)、米Intel(インテル)、米IBMらの開発競争を背景に、超伝導量子コンピューターの集積度が上がったのだ。川畑氏は超伝導量子コンピューターの集積度の変化のグラフを示し「見事に指数関数的に成長している。このトレンドは、ムーアの法則のときと酷似している」と説明した。
超伝導量子コンピューターの集積度ランキング(動作)では第1位がIBMの65量子ビット、第2位が中国浙江大学/中国科学技術大学の62量子ビット、第3位がGoogleの53量子ビットと続く。Googleの量子コンピューターについては、同社が2019年10月に「量子超越性」を実証したとして論文を公開し話題となった。
しかし、川畑氏は現在の量子コンピューターについて「まだまだおもちゃレベル」と表現する。量子コンピューターには、化学や金融などの分野でスーパーコンピューターが解けないような問題を解けると期待がかかる。こうした問題を解くには最低でも100万量子ビットが必要だという。