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企業の研究開発や国家プロジェクトが進む

 現在の集積度の成長を基に予測すると、2035年には100万量子ビットに到達する計算になる。達成に向け現在、企業の研究開発や国家プロジェクトが進んでいる。EU、英国、米国、日本は数百億~数千億円規模の予算を投じる。川畑氏は「特に注目すべきは中国」だと言う。中国では、数兆円規模を投じているという予測がある。

 日本では2020年1月に内閣府が量子技術イノベーション戦略を策定。川畑氏は「量子テクノロジーを重要な研究開発テーマとして選定し、重点的に研究開発を進めていく」と説明した。同戦略は技術開発、国際戦略、産業イノベーション戦略、知的財産、人材開発――の5つの戦略を軸とする。

 川畑氏は、超伝導量子コンピューター開発の課題についても説明した。典型的な超伝導量子ビットのサイズは1平方ミリメートル程度。これ以上の微細化は性能の低下などにつながるため、現状ではこのサイズが限界だという。この量子ビットを集積化していくには、巨大な冷凍機の開発も不可欠だ。

 量子コンピューターの開発方式は超伝導方式のほかにもイオントラップ、シリコンフォトニクス、ダイヤモンド、シリコンゲルマニウム、トポロジカルなどがある。大規模化に向けて、様々なアプローチから研究開発が進む。

 特に近年技術開発が進んでいるのがシリコン量子コンピューターである。シリコン方式の場合、超伝導量子ビットよりも高い温度で動作が可能だ。超伝導方式よりもコンパクトで簡易的な冷凍機で十分とされ、商用量子コンピューターの選択肢として期待がかかるという。現在Intelなどが研究開発に取り組んでいる。

 産業界の期待が大きく、世界で開発競争が進む量子コンピューターだが、実現に向け課題も山積みだ。川畑氏はこうした現状を踏まえ「研究開発の国・企業の長期的な支援、産学連携がどうしても必要だ」と呼びかけた。