技術動向から読み取れる未来と、起こる得る課題を乗り越えた未来
河井はこれに対し、「おそらく起こる未来」と「より望ましい未来」を切り分けて考えることが面白いと評価した。前者は統計や技術動向などから読み取れる確度の高い未来。そこで起こるであろう課題も推察し、それを乗り越えた未来が後者だ。
例えば、技術に関してよく語られる「おそらく起こる未来」として、AI(人工知能)やロボティクスの進化がある。ともすると、その影響で失業者の増加が起こるといった分析になりがち。しかし、単に何かが失われるだけではなく、既存の、あるいは他分野の技術との融合により新たな産業や職業が生まれる可能性や、ワークライフバランスの改善など「より望ましい未来」も考えられるはずだ。つまりは当事者として「望ましい未来」を着地点としてストーリーを描くことで、技術の新たな活用方法を発見したり、イノベーションを生み出したりできるというのが三治氏の主張である。
図版などをスライドで紹介しながら、『「望ましい未来」をつくる技術戦略』で述べられた未来へのロードマップに対する考え方が示されたこのセッションは、冒頭で河井が触れた「未来のシナリオを考えるヒント」を求める者に対し、1つの指針となるものになったと言えそうだ。