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 PwCコンサルティング パートナーの三治信一朗氏は2021年10月19日、オンラインで開催された「日経クロステック EXPO 2021」で「2040年はどんな社会?『望ましい未来』の見つけ方」と題したトークセッションに、書籍『「望ましい未来」をつくる技術戦略』の著者の1人として登壇。12のテーマに沿って描かれた未来シナリオとともに、「おそらく起こる未来」と「より望ましい未来」を提示した同書で示された“未来へのシナリオの描き方”を紹介した。モデレーターは、日経BP TechFindプロデューサー 河井保博が務めた。

PwCコンサルティング パートナー 三治信一朗氏(右)とモデレーターを務めた河井保博(左)
PwCコンサルティング パートナー 三治信一朗氏(右)とモデレーターを務めた河井保博(左)
(出所:日経クロステック、配信動画をキャプチャー)
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 トークセッションはまず、「未来のシナリオを考えるヒントがほしい」「これからの大きなトレンドをまとめてほしい」という企業からの問い合わせがこの1年で増えてきたという河井の報告から始まった。不確実性が増すばかりの現代にあって、社会や生活がどのように変化していくのか、そしてどんなビジネスがそこで成立するのか、コロナ禍がその不安をいっそうあおったということなのかもしれない。

 三治氏は「テクノロジーと未来のありようが交錯する世の中になってきた」と話す。コロナ禍におけるリモートワークの普及はその端緒。状況に追い込まれた側面はあるが、テクノロジーが未来へのアップデートを加速させたと見ることもできる。「テクノロジーの進化に呼応した形で訪れる未来を描くことが大切だ」(三治氏)。

 「未来はやってくるもの」。従来、未来については受け身で考える傾向が強かった。三治氏はこう説明する。新型コロナウイルスによって激変する情勢の中で、否が応でも自身の未来がどうなるか、やってくる未来を自分事としてとらえ、考えることを余儀なくされた。こうしたことから多くの人が、自分自身を変化させることで、社会や組織の未来のありようを描けることに気づいたのだという。

「望ましい未来」の実現に向けた12の未来シナリオ

 前述の『「望ましい未来」をつくる技術戦略』では、12領域に関する未来と105の技術の関係性をひもといているが、実際にはどんな技術が伸びるかは未知数であり、技術の進化が未来のありように影響することがある。同様に、自分や社会と各技術との関係性によっても、来る未来のありようとスピード感に変化が生まれるというのが三治氏の主張だ。

 書名と当セッションのタイトルに「望ましい未来」とあるが、どういった視点に立つかで導き出されるものは違ってくる。その視点について河井が問いかけると、三治氏はまず「個人の幸せだけを追求する未来は望ましくない」という考えを述べた。同書では、広くみんなが協調して作り上げる、独りよがりではない未来を「望ましい未来」として描いたという。