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 センターオープン式のフリースタイルドアは大きな荷物の出し入れもしやすく、子供の乗せ降ろしやベビーカーや車椅子でのアクセス性も良い。カラーは3トーンカラーを採用しており、塗装前検査工程では人間の能力を最大限引き出すために、「従来の常識を覆すような設備を導入した」(上藤氏)。

 塗装前検査工程では数十μmサイズの付着物を見つけるために、従来はより明るくするアプローチを採っていたが、それは「ステージの上でスポットライトを浴びている感覚」(上藤氏)だった。この環境下で作業する従業員の状態を生理指標で把握するため、心拍に注目して、緊張状態の可視化を行ったという。

 心拍間隔を表すRRI(R-R Interval)は通常は少しずつ揺らいでいるが、睡眠時などリラックス状態では揺らぎが大きく、緊張時には揺らぎが小さくなる。「工程で実測した結果、複雑な作業や目をよく使う作業、照度の高い環境、また上司が近くにいるときは分布が集中し、雑談や休憩時には分散していることが分かった」と上藤氏は明かす。

 塗装前検査⼯程でもう1つ用いたのが、視界内で目立つものを可視化する「リアルタイムサリエンシー」技術だ。

 リアルタイムサリエンシー技術とは何か。上藤氏によれば「人間の脳は輝度、色、輝き、動きの情報に基づいて周囲と異なる特徴を持つ領域を認知している。これを視線計測器で撮影し、ヒートマップのように画像処理する技術」とのことだった。サリエンシーマップで見ると、検査面であるボンネットよりも周囲の照明が目立っていたため、サイドの照明をすべて消し、ボンネットへの蛍光灯の映り込みが目立つようにした。すると心拍の状態も緊張状態から、よりリラックスした状態になったという。

 「最初は暗くすることによって、『見えにくい』、『不安』などネガティブな声もあったが、そのうち『楽になった』という声に変わった。人は経験からくる思い込みや変化に対する不安があるので、人の状態を評価するときは、『生理』、『行動』、『主観』の3つの指標を総合的に見るようにしている」(上藤氏)。

 この取り組みの結果、品質が向上して人員を削減でき、光熱費やブース温度の上昇も抑えられただけでなく、職場のモチベーション向上にもつながり、人にも環境にもやさしい工程を実現できたという。

心拍数による人の状態の可視化とリアルタイムサリエンシー技術
心拍数による人の状態の可視化とリアルタイムサリエンシー技術
人にも環境にも優しい工程を実現した。(出所:日経クロステック、配信動画をキャプチャー)
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