ゼロカーボン市場でリードする中国
「現在、ゼロカーボン市場を席巻しているのは中国だ」と井熊氏は続ける。たとえば19年の太陽光発電パネルでは上位10社中8社が、同じく風力発電用タービンでは上位15社中8社が、EV・PHVメーカーランキングでは上位20社中7社が中国企業である。
実はエネルギー政策でも中国は優位に立っている。ゼロカーボンを目指すには原子力発電が重要な役割を果たすが、日米欧は新たな原子力発電所の建設が難しい状況にある。ところが、中国では40もの原発の建設が計画され、2位であるロシア(25)、3位のインド(24)を圧倒している。
井熊氏がまとめた「ゼロカーボン・テクノ曼荼羅(まんだら)」では、計算機、機械、バイオ、化学という4つの相でゼロカーボンを巡るさまざまな技術分野を、その関わりを表した。このうち、計算機、機械、化学の3つの分野において中国が高い競争力を発揮し、世界を圧倒していると井熊氏は語った。
こうした現状を踏まえたうえで、日米欧はどう動くのか。この点について井熊氏はまず米国の政策から解説をはじめた。米国の基本政策は、中国優位な市場において、中国の勢力がこれ以上拡大しないことをまずは目指す。たとえば日欧豪との連携を深めて経済的な包囲網を敷いたり、また、トランプ政権下で発動した中国製太陽光発電パネルへの関税を継続、強化させていったりするなどだ。
また、後れを取っている分野においては、日欧などとの国際協調のもとで技術開発を行っていく。管政権時代の今春に立ち上げた「日米競争力・強靱(きょうじん)性(コア)パートナーシップ」において、「健康でグリーンな世界経済復興の主導」という合意に達しているなどがその例だとする。