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中国経済の動きに注目

 各氏のポジショントークの後、最近注目している半導体関連のニュースやトレンドについて、フリーディスカッションが始まった。口火を切った南川氏は「中国の経済の動き」だと語った。

 「中国政府の共同富裕政策や、中国恒大集団など不動産会社への圧力などによって株価や不動産価格が落ちている。この2つが中国のこれまで10年間の成長の原動力だったので、これ(価格の下落)を抑えなければいけないほどの政策転換をしてるということだろう。これは、簡単に解決する問題ではなく、今後の中国のエレクトロニクス消費の下方修正につながってくるのではないか」(南川氏)と懸念を示した。

 若林氏も「その通りだ」と相づちを打ち、「中国も、恐らく米国も金利がこれから上がるだろう。金利が低いと設備投資だけでなく在庫投資もするわけで、元からファーウェイ(Huawei Technologies)などは米中摩擦の中で安全のために多くの半導体を購入していた。最近は一部の商社が投機的に買っているケースも結構多いのではないか。サプライチェーン構造が変わったときは、どこに在庫があるか見えにくく、SEMIの2001年の会合でなぜ、ITバブル崩壊が見えなかったのかという反省のパネル討論があったが、既存プレーヤーのサプライチェーンは見ていたが、垂直統合モデルからファブレス/ファンドリーモデルへ変化の中で、EMSやOSAT、山塞機(シャンジャイジ)市場はデータに入っていなかった。今回も、何十年に一度のサプライチェーン変革であり、新しいプレーヤーの動向が見えにくく、データが入っていないかもしれない。その中で、金利が上がると在庫を減らしてキャッシュを増やすといった動きも出てくるかもしれない。足元でいうとメモリーに表れていて、DRAMのスポット価格が少し下がってきている。これまでのシリコンサイクルの歴史に学べば、DRAMは先行指標になるので、懸念材料の1つだ」(若林氏)。

 蓬田氏も「中国は極めて気になるところで、経済の変調があると、投資計画が立ち消えになる可能性も無視できない」と、中国は大きな懸念材料だと語る。

台湾TSMCの日本工場設立は日本にも大きなチャンス

 ここで蓬田氏は台湾の半導体大手TSMCが日本に工場を設立する話題に触れた。「SEMI Japanにも問い合わせがきている」と明かした上で、「その流れを日本としてどうやってポジティブに持っていけるだろうか」(蓬田氏)と問いかけた形になった。

 これを受けて若林氏は、「TSMCの新工場は日本向けが4%で規模的には3000億円ぐらいではないか。これまではその3000億円が輸入だったわけだが、国内生産になるとGDPにプラスされることになる。世界の半導体マーケットは今60兆円ぐらいで、5年後、10年後に100兆円になるときには、この3000億円、4000億円というのが恐らく1兆円規模になる。この1兆円が輸入ではなく国内生産になるという効果はかなり大きい」(同氏)。輸入に頼る場合、新型コロナウイルスなどのパンデミックはもちろん、米中摩擦などの安全保障問題などによっても滞る可能性があるからだ。

 若林氏は続けて、「かつてのニクソンショックのような『バイデンショック』が起こると、円安修正になりかねない。そうなると、やはり輸入がかなり厳しくなる。そういうことを考えると日本の中に半導体の工場を作ること、特に最先端のTSMCからいろいろなノウハウを共有できることのメリットはかなり大きい。これからは、単なる市況やマーケットの自由に任せるのではなく、ある程度政策が関与して需要創出、需給をある程度コントロールすることも必要ではないか」(同氏)。

 南川氏も若林氏に同意する。「TSMCは最初の一歩で、その後次々に“国プロ(国家プロジェクト)”を続けていく必要があるだろう。これだけで尻切れにさせないように、日本が強い半導体材料や装置をもっと強くするために、どういうプロジェクトが必要なのかを考えていきたい。さらに日本は新しいものをユーザーが受け入れないとか、安くならないと使わないという傾向があるので、早期に採用するならインセンティブを与えるといったユーザー側への仕組みも取り入れるとよいのではないか」(南川氏)。

 若林氏は最近の議論はこれまで40年間のシリコンサイクルの議論とは変わってきた点を指摘する。「米中摩擦、台湾海峡や朝鮮半島などの地政学的リスクが高まれば世界のサプライチェーンが止まってしまう。5年、10年の計画の中で、半導体を地産地消しなければ太刀打ちできないということを、国も甘利さん(元経済産業大臣の甘利明衆院議員)も含め、皆さんが認識したのが大きな変化だ」(同氏)。

 蓬田氏も「確かに経済産業省の半導体に対する見方が変わってきている」と語る。「これまで以上に安全保障の観点で関心が高まってきている。これは日本だけではなく、海外、例えばワシントンの政策担当者も日本の動向に関心を持っている。そういった情報のやりとりは今後どんどんと増えてくるだろう。また、日本の半導体製造装置や材料は突出して強い部分があるので、今持っている世界一の強さというところをもっと皆さんに知ってもらいたい」(同氏)。

 若林氏はさらに視点を広げて「工場立地だけでなく、研究開発もグローバルで進めていく必要がある」と語った。「これまでのような国内だけの“日の丸連合”による研究にとどまらず、ベルギーimec(Interuniversity Microelectronics Centre)などのグローバルな研究機関を日本に持ってくることも極めて大事。欧州の企業にもこれから誘致の動きがあるのではないか」(同氏)。

半導体不足の解消はカテゴリーによって“まだら模様”

 最後に当セッションのお題である「半導体不足はいつ解消するのか」について回答が出された。若林氏は「まだら模様だ」と総括した上で、「アナログやパワー半導体などは来年も堅調と思われるが、問題は汎用品、あるいはメモリーなどはマイナスになるのではないか。中国のバブルが崩壊しても、半導体がマイナスになることはなさそうだが、サプライチェーン次第ではきわどいところ」(同氏)と見通しを語った。

 南川氏も「まだら模様ではないか。メモリーに関しては来年1~3月期から余り始める一方、ロジック系などは来年前半までは足りない状況が続くだろう。ただ来年後半はかなり余ってくる可能性がある。先ほどのカーボンニュートラルが本当に立ち上がってくることが前提だが、パワー半導体は2023年まで足りないのではないかと強気で見ている」(同氏)。

 蓬田氏も「かなり不透明な部分が多く、領域、分野によって変わってくる。セット/プラットフォームの回転が非常に速いものは、その半導体を使わずに新しいプラットフォームで進めていけるが、それが長ければ長いほど代替がきかないので、やはりまだら模様になる」(同氏)と結んだ。