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 日経クロステックの長寿コラム「テクノ大喜利」がライブになって「日経クロステック EXPO 2021」に登場した。2021年10月20日に行われたトークセッション「半導体不足はいつ解消するのか」では3人の識者が持論を展開。現状と今後の見通しを大いに語った。

「テクノ大喜利ライブ:半導体不足はいつ解消するのか」トークセッションの模様
「テクノ大喜利ライブ:半導体不足はいつ解消するのか」トークセッションの模様
(出所:日経クロステック、配信動画をキャプチャー)
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今年いっぱいは半導体不足が続く

 セッションは各氏のポジショントークから始まった。東京理科大学大学院 経営学研究科の若林秀樹教授は足元の半導体市況について「需要や価格弾性をどう見るか。加えて、業界環境がかなり変わっていたため、在庫が見えにくい状況にある。さらには米中摩擦、新型コロナ禍のBCP(事業継続計画)と、投機的なものをどう見るか。サプライチェーン全体の中で特にウエハーが足りないのは事実なので、これをどう見るかがポイント」(若林氏)と話す。

 続けて若林氏は、「パソコンのギガ特需やパネル系(テレビ)の東京五輪の反動など、いわゆる巣籠もり需要の反動でメモリーなど市況は少々ゆるい状況にある。⼀⽅で⾜りないものもまだある。今後について⾔えば、5Gのインフラ投資の遅れ、中国の商社における過剰在庫、これをどう⾒るのか。あるいは⾦融テーパリング(量的緩和策による金融資産の買い入れ額を順次減らしていくこと)の影響をどう⾒るのか。ITバブル崩壊か、⽇本のバブル崩壊かという厳しい見方をする関係者もいる」という⾒解を⽰した。

 このほか若林氏は「新しい資本主義が話題になっているが、半導体で新しい考え方、ニューディール的な考えも必要」「データセンターや基地局などで半導体の初期需要を上げていく『デジタル日本列島改造論』によって半導体の需要を長期的に伸ばしていく必要もある」といった独自の主張を披露した。

東京理科大学大学院 経営学研究科の若林秀樹教授
東京理科大学大学院 経営学研究科の若林秀樹教授
(出所:日経クロステック、配信動画をキャプチャー)
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 インフォーマインテリジェンスのシニアコンサルティングディレクターを務める南川明氏は「世界には人口増加、高齢化、都市化という3つの大きなメガトレンドがあり、さまざまな社会的問題を引き起こしている。これらを解決するために半導体技術のニーズが加速しており、コロナ禍によって社会全体が変革を求められているのが現状だ。この1年間で120以上の国・地域がカーボンニュートラル宣言をしており、これらがすべて半導体の需要につながる。そのため、半導体の需要と供給のバランスを見るためには、当然これら各国の政策や半導体企業の投資やその需要を正確に予測することが必要となる」(南川氏)。

 南川氏は半導体メーカーの工場稼働率と半導体の在庫日数を示すグラフを見せてこう語った。

 「これら2つのデータを見ることで半導体の需給バランスの状況が向こう半年ぐらいでどうなっていくのかをかなり正確につかめる。結論から言うと今年いっぱいはものが足りない状態が続き、来年の後半くらいから急速にものが余ってくると考えられる」(南川氏)。

インフォーマインテリジェンス シニアコンサルティングディレクターの南川明氏
インフォーマインテリジェンス シニアコンサルティングディレクターの南川明氏
(出所:日経クロステック、配信動画をキャプチャー)
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 SEMI Japan マーケティング部 マネージャーの蓬田宏樹氏は、半導体製造装置市場は過去最高が続いており、前工程の製造装置投資額も2022年にかけて3年連続で成長していく見込みだと話した。

SEMI Japan マーケティング部 マネージャーの蓬田宏樹氏
SEMI Japan マーケティング部 マネージャーの蓬田宏樹氏
(出所:日経クロステック、配信動画をキャプチャー)
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 「新規の量産ファブ(製造工場)の建設計画も中国が非常に多く、台湾、米国と続く。中国は、よりアグレッシブな計画もあり、数はさらに上に行きそうだ。全体としては半導体不足に対応するために大規模ファブの建設計画が世界で進行している状況だ」(蓬田氏)。

 一方で半導体不足解消については他の要因が関連するため、見通しは不透明だと蓬田氏は続ける。

 「半導体不足のファクターはファブのキャパシティーとオペレーション、地政学的要素の3つがある。このうちオペレーションは、新型コロナ感染拡大の影響が非常に大きかった。地政学的要素では、仮に中国で続々とファブが作られて、ものができても、各国の経済安全保障の動向によっては利用できないこともあり、協調を維持できるかどうかが気になるところだ」(蓬田氏)。