GAFAM(米国の巨大IT企業、Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)の今日の隆盛の根底にもアイデンティティー管理がある。今日では当たり前になっている個々の機能に分解した小さなサービスを連携させて全体を構成する「マイクロサービス」方式の効率的なシステム開発を行うには、アイデンティティー管理が欠かせないからだ。
さらにGAFAMはマイクロサービスを外部に拡大して「プラットフォーム戦略」につなげていった。ユーザーだけでなく、デベロッパーをも囲い込むApp StoreやGoogle Playもこの延長線上にある。「現代においてはアイデンティティーが管理されていないと経営もままならないはず」と崎村氏は指摘する。
IDを大事にしてもらうインセンティブがポイント
後半のパネルディスカッションでは「eKYC」のほかにもさまざまな話題が議論された。パネリストとして参加したOIDF-Jの理事・エバンジェリストの倉林雅氏は、自らがヤフーのID部門で働いており、その観点から「ヤフーはアイデンティティー管理フレームワーク企業と言えるのか? そう呼ばれるための条件は?」という問いを崎村氏に投げかけて議論が始まった。
ここから議論は「アイデンティティー管理のライフサイクル」の重要性に進んでいく。アイデンティティー管理をビジネスの根幹として活用するためには、登録からアクティベート、停止や再開、保管、削除といったプロセスを正確に運用する必要がある。パネリストとして参加したOIDF-Jのエバンジェリストの伊東諒氏はミクシィでID/決済関連の業務を担当する。「ゲームではIDを使い捨てするユーザーが多く、プラットフォームの価値を高めにくい」という現状を打ち明けた。