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 「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)」はIoT(モノのインターネット)技術などを活用した次世代のものづくりに向けて、様々な企業が連携することを目指し、2015年に発足した。マツダや神戸製鋼所などの大企業から中小企業まで幅広く参加し、2021年8月時点で会員は239社・704人にものぼる。

 特に力を入れる活動の1つが、異なる企業の社員10人程度でグループを組み、各製造現場に共通する「困りごと」の発掘・分析・実証実験を1年間で行う「業務シナリオWG(ワーキンググループ)」だ。20年度に活動し、IVI内で表彰されたWGの取り組みを4回にわたって解説する。第1回の今回は、CKDや栗田産業(静岡市)などの社員からなるWG「6B01」が手掛けた金型の予知保全について紹介する。

 予知保全の対象とした医薬品用のブリスター包装機は、多数の錠剤を並べて封入した大きなシートを金型で打ち抜き、患者が使う10錠単位などのパッケージにする機構を持つ。

CKDが販売する医薬品包装機に組み込まれた、シートを打ち抜く装置
CKDが販売する医薬品包装機に組み込まれた、シートを打ち抜く装置
(出所:IVI)
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 シートを打ち抜く金型が摩耗すると、パッケージのへりにバリが生じるため、包装機のユーザーは数カ月~数年に1回、金型を修繕している。ただ、金型の摩耗は見た目では分からず、打ち抜く素材によっても摩耗の度合いが変わるため、修繕すべき時期を正確に予測することが難しい。ユーザーは、まだ摩耗の少ない金型を余裕を見込みすぎて修理することが多く、結果として生産活動に無駄が生じていた。

 一方で、包装機の供給元であるCKDは、金型を修繕する技術者の確保に苦戦している。同社は顧客から修繕依頼を受けて金型を研磨し、組み付けていた。しかし、技術者の数が限られるため、修繕まで顧客を何週間も待たせてしまう場合があった。サービス向上のために、より計画的に金型の修繕をする方法を模索していた。

金型をやすりで削り、摩耗を再現

 そこで同WGは、金型がシートを打ち抜くときの荷重のデータから金型の摩耗を予測しようと試みた。研いでいない包丁で食材を切るときに力が必要なように、摩耗した金型でシートを打ち抜くには摩耗前より大きな荷重が必要で、データに相関があると考えられるためだ。CKDの本社工場で実証実験を行った。

 予知保全の対象となるプレス金型は、薬を包装したシートを上から打ち抜く「パンチ」と、パンチする部分に穴があいた土台である「ダイプレート」で構成する。シートはパンチとダイプレートの間に挟まれて、パンチの荷重で10錠単位などに四角く打ち抜かれる。

打ち抜かれたシート(上)と打ち抜いた製品(下)のイメージ
打ち抜かれたシート(上)と打ち抜いた製品(下)のイメージ
(出所:IVI)
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 実際に金型が摩耗するまで待つと時間がかかるため、実証実験ではやすりで人為的に金型を摩耗させ、数日で必要なデータを取得した。具体的には、金型の中でも打ち抜く際に負荷がかかりやすいダイプレートの四隅をやすりで削った。やすりを10回動かして削り、ポリ塩化ビニール製のシートを100~200回打ち抜き、その後さらにやすりを10回動かして削ったのちシートを打ち抜く、という試験を繰り返した。すると金型を80回削った段階でシートにバリが発生した。

 金型がシートにかける荷重は、設備に力センサーを取り付けて測定し、専用のデータ収集器でCSVファイルに変換し、出力した。80回削った金型を使って打ち抜いた場合、通常よりも大きな荷重がかかっていることが確認できた。

金型が錠剤を包装するシート打ち抜くときにかかる荷重を測定した
金型が錠剤を包装するシート打ち抜くときにかかる荷重を測定した
横軸はシートを1回打ち抜くまでの経過時間、縦軸は打ち抜くためにかかる荷重を示す。80回四隅を削った金型を使用した場合、削り出し回数が80回以下の金型と比べて打ち抜きに大きな荷重が必要だった。(出所:IVI)
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